しゆ/″\》のものがありまして、中《なか》には牙《きば》や骨《ほね》の上《うへ》に動物《どうぶつ》の形《かたち》や人間《にんげん》の形《かたち》を彫刻《ちようこく》したものなどがあります。(第二十二圖《だいにじゆうにず》)これには前《まへ》の時代《じだい》には見《み》られなかつた品物《しなもの》です。そこに、大《おほ》きな平《ひら》たい骨《ほね》のようなものゝ上《うへ》に、象《ぞう》の形《かたち》が彫刻《ちようこく》してあるのを見《み》るでせう。(第二十三圖《だいにじゆうさんず》)これは長《なが》い毛《け》の生《は》えた象《ぞう》であることはすぐ氣《き》づくのでありまして、今日《こんにち》の象《ぞう》とは違《ちが》つて、昔《むかし》シベリアなどに棲《す》んでゐたまんもす[#「まんもす」に傍点]といふ大象《たいぞう》の形《かたち》を現《あらは》したものであります。そのまんもす[#「まんもす」に傍点]の形《かたち》をまんもす[#「まんもす」に傍点]の牙《きば》の上《うへ》に彫《ほ》つたもので、これは珍《めづら》しい品《しな》であります。こゝにあるのはその模造品《もぞうひん》であつて、現物《げんぶつ》はフランスのある博物館《はくぶつかん》に大切《たいせつ》に保存《ほぞん》されてあります。この他《ほか》れんぢゃー[#「れんぢゃー」に傍点](馴鹿《となかい》)の上《うへ》にれんぢゃー[#「れんぢゃー」に傍点]の形《かたち》を彫刻《ちようこく》したものや、人間《にんげん》の形《かたち》などを彫《ほ》つたものも少《すくな》くありません。
[#「第二十三圖 まんもす牙上彫刻まんもす圖」のキャプション付きの図(fig18371_24.png)入る]
(ロ) 舊石器時代《きゆうせつきじだい》の繪畫《かいが》など
[#「第二十四圖 スペイン・アルタミラ洞天井畫」のキャプション付きの図(fig18371_25.png)入る]
かように舊石器時代《きゆうせつきじだい》の中頃《なかごろ》から、動物《どうぶつ》などの形《かたち》を彫刻《ちようこく》にして現《あらは》すことが大《たい》そう上手《じようず》になつて來《き》ました。これらを見《み》てもこの時代《じだい》の人間《にんげん》を一概《いちがい》に野蠻人《やばんじん》だとはいへない、たゞ金屬《きんぞく》を使用《しよう》することを知《し》らなかつたといふにすぎないのです。この彫刻《ちようこく》を造《つく》つた人間《にんげん》は、前《まへ》に説明《せつめい》した古《ふる》い人間《にんげん》の模型中《もけいちゆう》にあつた『クロマニヨン』人《じん》に屬《ぞく》するのであります。『クロマニヨン』人《じん》は、頭腦《ずのう》も大《おほ》きく恰好《かつこう》も整《とゝの》うてをり、けっして野蠻人《やばんじん》といふことの出來《でき》ない體格《たいかく》の持《も》ち主《ぬし》でありますからこそ、かようなものが造《つく》り得《え》られたのです。更《さら》に『クロマニヨン』人《じん》は、彫刻《ちようこく》をしたばかりでなく、大《おほ》きな繪《え》も描《か》いたのです。その繪《え》は今日《こんにち》まで遺《のこ》つてをりますが、あちらの壁《かべ》を御覽《ごらん》なさい。(第二十四圖《だいにじゆうしず》)壁《かべ》に懸《かゝ》つてゐる牛《うし》、馬《うま》、鹿《しか》などの繪《え》はかれ等《ら》が洞穴《ほらあな》の中《なか》の石壁《いしかべ》に彫《ほ》りつけたり、また描《か》いたりした繪《え》の寫《うつ》しであります。かの牛《うし》はびぞん[#「びぞん」に傍点]といふ牛《うし》で、今日《こんにち》の牛《うし》とはその形《かたち》は異《こと》なつてゐますけれども、鹿《しか》や馬《うま》の形《かたち》はなんとよく似《に》て本物《ほんもの》のようでありませんか。筆致《ひつち》の確《たし》かな點《てん》、全體《ぜんたい》が生《い》き/\してゐるところ、實《じつ》にこれがそんな古《ふる》い一萬年前《いちまんねんぜん》にも近《ちか》い時代《じだい》に出來《でき》たものであらうかと、誰《たれ》も疑《うたが》ふのもむりはありません。實際《じつさい》のところこれが今《いま》から五十年《ごじゆうねん》ほど前《まへ》に、初《はじ》めてスペインの北《きた》の海岸《かいがん》アルタミラといふ田舍《ゐなか》の丘《をか》の上《うへ》の洞穴《ほらあな》で發見《はつけん》された時《とき》、たいていの學者《がくしや》は皆《みな》、これが一萬年《いちまんねん》もへた古《ふる》いものでなく、ずうっと新《あたら》しいものだといつて誰《たれ》も信《しん》じなかつたほどです。しかしその洞穴《ほらあな》をよく調《しら》べると、けっして新《あたら》しい時
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