だりうへ》)これは皆《みな》さんも、果《はた》して人間《にんげん》が造《つく》つたものであるか否《いな》かについて疑《うたが》ふのはむりがありません。學者《がくしや》の間《あひだ》にも種々《しゆ/″\》意見《いけん》がありまして、ある學者《がくしや》は、人間《にんげん》が手《て》を加《くは》へて造《つく》つたものであるといひ、またある學者《がくしや》は、いや自然《しぜん》に石《いし》がぶつかったり、何《なに》かの機會《きかい》に出來《でき》たにすぎないものだといふ。しかし、かような石《いし》の破片《はへん》を持《も》つて來《き》て、これが原石器《げんせつき》であるかどうかといふ確《たし》かなことは答《こた》へが出來《でき》ないにしても、人間《にんげん》が立派《りつぱ》な石器《せつき》を造《つく》る以前《いぜん》に、それよりも簡單《かんたん》な、ちょうどこんな粗末《そまつ》な石器《せつき》を造《つく》つたことがあつてもよいし、またこんな石片《せつぺん》の中《うち》にも、人間《にんげん》の手《て》を加《くは》へたものが混《こん》じてゐることだけは認《みと》めなければなりません。
 よしこの原石器《げんせつき》に疑問《ぎもん》があるにしても、その次《つ》ぎに竝《なら》べてある拳《こぶし》のような形《かたち》をした石《いし》になると、誰《たれ》が見《み》ても(第二十一圖《だいにじゆういちず》左下《ひだりした》)かう根元《ねもと》が太《ふと》つて先《さき》が尖《とが》つた石《いし》ばかりが、偶然《ぐうぜん》にわれて出《で》て來《く》るとは思《おも》はれない。どうしてもこれは人間《にんげん》が造《つく》つたものとしなければなりません。これには人間《にんげん》の拳《こぶし》ほどもある大形《おほがた》のものが非常《ひじよう》に多《おほ》いのでありまして、一番《いちばん》古《ふる》い石器《せつき》といはれ、セイユ期《き》の石器《せつき》と呼《よ》ばれてゐるものであります。その次《つ》ぎに造《つく》られた石器《せつき》は、その隣《とな》りにあるアシュウル期《き》の石器《せつき》です。(同上《どうじよう》右上中《みぎうへなか》)形《かたち》は大體《だいたい》前《まへ》のものに似《に》てゐるけれども、製法《せいほう》が細《こま》かくなり、だいぶ美《うつく》しく出來《でき》てをります。こんな石器《せつき》は一體《いつたい》何《なに》に使用《しよう》したものであるかといふに、全體《ぜんたい》が槌《つち》の役《やく》にもなり、尖《とが》つたところでは物《もの》を突《つ》き、角《かく》ばつたところでは軟《やはら》かいものを切《き》るといふように、あらゆることに用《もち》ひられたのでせう。これが次第《しだい》に進《すゝ》んで來《き》ますと使用《しよう》の途《みち》も別《べつ》になり、それ/″\適當《てきとう》の形《かたち》になつて石槍《いしやり》とか石劍《いしつるぎ》とか、あるひは石庖丁《いしほうちよう》とかにわかれて行《ゆ》くのでありますが、この時代《じだい》にはまだ、それがわかれてゐなかつたのであります。
[#「第二十二圖 骨牙器と彫刻物」のキャプション付きの図(fig18371_23.png)入る]
 その次《つ》ぎに竝《なら》べてあるのは、皆《みな》さんの見《み》られるとほりその造《つく》り方《かた》は、前《まへ》のよりもかへって簡單《かんたん》であるようですが、しかも大《おほ》きく打《う》ちわつた表面《ひようめん》を巧《たく》みに使《つか》つて、必要《ひつよう》の部分《ぶぶん》を細《こま》かく打《う》ちわつてあるのが氣《き》につくでせう。薄《うす》く平《ひら》たいもの、先《さき》が鋭利《えいり》に尖《とが》つたものなども出來《でき》てきたのです。これをムスチェー期《き》のものといつてゐます。なほ次《つ》ぎ|々々《/\》に陳列《ちんれつ》してあるように、石器《せつき》には非常《ひじよう》に精巧《せいこう》なソリュートレ期《き》のもの、また少《すこ》し簡單《かんたん》で要領《ようりよう》のよく出來《でき》てあるマデレエン期《き》といふふうにだん/\變化《へんか》して來《き》てゐることがわかります。(第二十一圖《だいにじゆういちず》左中《ひだりなか》及《およ》び右下《みぎした》)ところがこのマデレエン期《き》になりますと、石器《せつき》はあまり進歩《しんぽ》したように見《み》えないけれども、この時代《じだい》にはひつて新《あたら》しく盛《さか》んに出《で》て來《き》たものは、動物《どうぶつ》の骨《ほね》だとか、角《つの》だとかで造《つく》つた品物《しなもの》であります。そこに竝《なら》べてあるような骨製《こつせい》の先《さき》の尖《とが》つたものや、種々《
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