はじ》めて出現《しゆつげん》してから歴史《れきし》の始《はじ》まるまでと、歴史以後《れきしいご》今日《こんにち》までとの長《なが》さの比例《ひれい》は、歴史以前《れきしいぜん》の方《ほう》が歴史以後《れきしいご》の數十倍《すうじゆうばい》からあるといふことでわかるでせう。
(ハ) 文化《ぶんか》の三時代《さんじだい》
[#「第十八圖 ネアンデルタール人想像圖」のキャプション付きの図(fig18371_19.png)入る]
さて人類《じんるい》が始《はじ》めてこの世界《せかい》に現《あらは》れてから非常《ひじよう》に長《なが》い間《あひだ》、歴史時代《れきしじだい》にはひるごく近《ちか》い時代《じだい》までも、人間《にんげん》は今日《こんにち》われ/\のように銅《どう》や鐵《てつ》の金屬《きんぞく》を使用《しよう》して種々《しゆ/″\》の器物《きぶつ》を作《つく》ることをまったく知《し》らなかつたのであります。それで最初《さいしよ》は今日《こんにち》の猿《さる》などと同《おな》じく、たゞそのあたりにある木片《きぎれ》だとか石塊《いしころ》だとかをもつて、穴《あな》を掘《ほ》つて蟲《むし》をとつたり、あるひは木《き》の實《み》をわつて食《く》ふといふような生活《せいかつ》をしてゐたのでありませう。ところがだん/\進歩《しんぽ》するに從《したが》つて石塊《いしころ》に多少《たしよう》の細工《さいく》を加《くは》へ、手《て》に握《にぎ》つて物《もの》を打《う》ち壞《こわ》すに便利《べんり》な形《かたち》にこしらへるようになりました。更《さら》にまたその石《いし》を磨《みが》いて美《うつく》しい形《かたち》の器物《きぶつ》を造《つく》るようになり、あるひは自分《じぶん》の食《く》つた動物《どうぶつ》の骨《ほね》に細工《さいく》を加《くは》へて、それを道具《どうぐ》にしたりしたのでありますが、とにかく主《しゆ》として石《いし》で造《つく》つた器物《きぶつ》を使用《しよう》した時代《じだい》が長《なが》らくつゞいたのです。それをわれ/\は石《いし》の時代《じだい》、あるひは石器時代《せつきじだい》と呼《よ》んでをります。
[#「第十九圖 クロマニヨン人想像圖」のキャプション付きの図(fig18371_20.png)入る]
ところが人類《じんるい》はまた偶然《ぐうぜん》に岩石《がんせき》の間《あひだ》にある金《きん》だとか銅《どう》だとかのような金屬《きんぞく》を發見《はつけん》して、こんどはその金屬《きんぞく》をもつて器物《きぶつ》を造《つく》るようになりましたが、これは石《いし》や骨《ほね》の器物《きぶつ》に比《くら》べると、非常《ひじよう》につごうの良《よ》いことを知《し》り、まづはじめにはたゞの銅《どう》を使《つか》ふようになつたのであります。ところがたゞの銅《どう》では柔《やはら》かすぎ、鑄造《ちゆうぞう》もむつかしいので、銅《どう》に錫《すゞ》をまぜて青銅《せいどう》といふ金屬《きんぞく》を作《つく》り、これを器物《きぶつ》の材料《ざいりよう》としてゐた時代《じだい》がありました。この時代《じだい》を青銅時代《せいどうじだい》あるひは青銅器時代《せいどうきじだい》と稱《しよう》するのであります。そののち遂《つひ》に鐵《てつ》が廣《ひろ》く器物《きぶつ》に使用《しよう》される時代《じだい》となつたのでありますが、その時代《じだい》を鐵《てつ》の時代《じだい》、あるひは鐵器時代《てつきじだい》といふのです。今日《こんにち》においては鐵以外《てついがい》にあるみにゅーむ[#「あるみにゅーむ」に傍点]その他《ほか》いろ/\の金屬《きんぞく》が發見《はつけん》されてまゐりましたが、やはり鐵《てつ》が切《き》れものや、何《なに》かに一番《いちばん》多《おほ》く使《つか》はれてゐるので、廣《ひろ》い意味《いみ》においては、今日《こんにち》も鐵器時代《てつきじだい》に屬《ぞく》するといふほかはありません。
[#「第二十圖 トムゼン氏」のキャプション付きの図(fig18371_21.png)入る]
かように人類《じんるい》が石《いし》から銅《どう》、あるひは青銅《せいどう》をへて、次《つ》ぎに鐵《てつ》をもつて刃物《はもの》をつくる時代《じだい》となりました。この三《みつ》つの時代《じだい》を考古學者《こうこがくしや》は、文化《ぶんか》の三時代《さんじだい》、あるひは文化《ぶんか》の三《みつ》つの階段《かいだん》と名《な》づけるのであります。しかしこの三《みつ》つの階段《かいだん》は、あらゆる人類《じんるい》が必《かなら》ずこの順序《じゆんじよ》でもつて通過《つうか》するものではありません。ある場合《ばあひ》には、石《いし》の
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