《ほう》にも、やはりこれと大體《だいたい》同《おな》じようなものが、あちこちに見受《みう》けられます。(第七十七圖《だいしちじゆうしちず》)
[#「第七十七圖 北朝鮮どるめん古墳」のキャプション付きの図(fig18371_78.png)入る]
 その後《ご》、南朝鮮《みなみちようせん》には三韓《さんかん》といふ小《ちひ》さい國《くに》が分立《ぶんりつ》しまして、その内《うち》辰韓《しんかん》といふのが、新羅《しらぎ》の國《くに》になり、弁韓《べんかん》は日本《につぽん》の植民地《しよくみんち》の任那《みまな》になり、また馬韓《ばかん》といふのが百濟《くだら》になつたのであります。ところが、これらの國《くに》の文化《ぶんか》は、わが國《くに》の西南地方《せいなんちほう》である九州邊《きゆうしゆうへん》の文化《ぶんか》と大《たい》そうよく似《に》てをりまして、その時代《じだい》の古《ふる》い墓《はか》から出《で》る品物《しなもの》は、日本《につぽん》のものと大《たい》した變《かは》りはありません。中《なか》にも日本《につぽん》の植民地《しよくみんち》だつた任那《みまな》や、新羅《しらぎ》の古墳《こふん》ではことにさうでありまして、どうしても南朝鮮《みなみちようせん》にゐた人間《にんげん》は、日本《につぽん》の九州邊《きゆうしゆうへん》の人間《にんげん》と、民族《みんぞく》の上《うへ》から見《み》ても大《たい》した變《かは》りはないように思《おも》はれます。しかし朝鮮《ちようせん》には日本《につぽん》の古墳《こふん》で皆《みな》さんが見《み》たような、前方後圓《ぜんぽうこうえん》の形《かたち》をした塚《つか》はなく、たゞ圓《まる》い塚《つか》が二《ふた》つくっついた瓢箪形《ひようたんがたち》のものがあるだけです。また南朝鮮《みなみちようせん》のある所《ところ》では、埴輪圓筒《はにわえんとう》のようなものが發見《はつけん》せられ、また勾玉《まがたま》もたくさん出《で》るので餘程《よほど》日本風《につぽんふう》であるかと思《おも》ふと、また日本《につぽん》の古墳《こふん》からは支那《しな》の鏡《かゞみ》がたくさん出《で》るのにかゝはらず、朝鮮《ちようせん》の古墳《こふん》にはこの鏡《かゞみ》の姿《すがた》をまったく見《み》せないといふようなこともありまして、その間《あひだ》に多少《たしよう》異《こと》なつたところがあり、民族《みんぞく》は同《おな》じでも、すでに違《ちが》つた國《くに》をつくつてゐたと考《かんが》へられます。
[#「第七十八圖 朝鮮慶州古墳群」のキャプション付きの図(fig18371_79.png)入る]
 さて、南朝鮮《みなみちようせん》には、あちらこちらに多數《たすう》の古墳《こふん》がありますが、中《なか》でも一番《いちばん》たくさん遺《のこ》つてゐるのは、元《もと》の新羅《しらぎ》の都《みやこ》慶州《けいしゆう》です。こゝは釜山《ふざん》から京城《けいじよう》へ行《ゆ》く汽車《きしや》に乘《の》つて、一時間《いちじかん》ばかりで大邱《たいきゆう》に着《つ》き、そこで下車《げしや》して自動車《じどうしや》で東《ひがし》の方《ほう》へ三四時間《さんよじかん》も走《はし》るとすぐ行《ゆ》かれる所《ところ》です。慶州《けいしゆう》には周圍《しゆうい》に低《ひく》い山《やま》があつて、一方《いつぽう》だけ少《すこ》し開《ひら》けてゐる地勢《ちせい》は、ちょうど内地《ないち》の奈良《なら》に似《に》て、まことに景色《けしき》のよいところであります。この町《まち》に着《つ》きますと、その低《ひく》い朝鮮《ちようせん》の家《いへ》が立《た》ち竝《なら》んでゐる間《あひだ》に、非常《ひじよう》に大《おほ》きい土饅頭《つちまんじゆう》がにょき/\と聳《そび》えてゐる景色《けしき》に誰《たれ》もが驚《おどろ》かされますが、これは皆《みな》、昔《むかし》の新羅《しらぎ》の王樣《おうさま》や偉《えら》い人《ひと》の古墳《こふん》なのです。その中《なか》でも一番《いちばん》立派《りつぱ》なのは、慶州《けいしゆう》の町《まち》の中《なか》にある鳳凰臺《ほうおうだい》といふので、これは高《たか》さ七十尺以上《しちじつしやくいじよう》もある大《おほ》きな圓塚《まるづか》です。この慶州《けいしゆう》の古墳《こふん》からは、今日《こんにち》までいろ/\のものが發見《はつけん》せられましたが、私共《わたしども》をびっくりさせたのは、ちょうど今《いま》から十年《じゆうねん》ばかり前《まへ》に、その鳳凰臺《ほうおうだい》の西手《にして》にある半崩《はんくづ》れの塚《つか》から出《で》た品物《しなもの》であります。私共《わたしども》は、その塚《つか》を金冠塚
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