》きな柱《はしら》の礎石《そせき》が殘《のこ》つてゐることもあります。この礎《いしずゑ》の竝《なら》べ方《かた》を見《み》て、そこにはどういふ形《かたち》の御堂《おどう》が建《た》つてゐたかゞ知《し》られます。もちろんこの時分《じぶん》のお寺《てら》の建築《けんちく》で、今日《こんにち》もなほ昔《むかし》の礎《いしづゑ》の上《うへ》に立《た》つてゐるものも、たまには珍《めづ》らしく殘《のこ》つてゐます。あの法隆寺《ほうりゆうじ》の金堂《こんどう》、五重《ごじゆう》の塔《とう》中門《ちゆうもん》などが一番《いちばん》古《ふる》いもので、千何百年《せんなんびやくねん》も長《なが》いあひだ木造《もくぞう》の建築《けんちく》がそのまゝ傳《つた》はつてゐるといふことは、世界《せかい》にも餘《あま》り例《れい》のないことです。その次《つ》ぎに古《ふる》いのは奈良《なら》の西《にし》にある藥師寺《やくしじ》の塔《とう》、それから聖武天皇頃《しようむてんのうころ》の建《た》て物《もの》が奈良《なら》にちょい/\殘《のこ》つてをります。これ等《ら》のお寺《てら》をよく見《み》ると、皆《みな》さんはいろ/\造《つく》り方《かた》の違《ちが》つてゐる點《てん》がわかり、また昔《むかし》の建築《けんちく》がいかにも良《よ》く出來《でき》てゐることに氣《き》がつくのですが、この建築《けんちく》のお話《はなし》もまた別《べつ》の時《とき》にすることにいたします。
 しかしこゝでちょっと申《まを》して置《お》くことは、かういふお寺《てら》の建築《けんちく》が支那朝鮮《しなちようせん》から傳《つた》はり、天皇《てんのう》の御殿《ごてん》や貴族《きぞく》の家屋《かおく》もさういふふうに作《つく》られるようになりましたが、人民《じんみん》の家《いへ》などはたいていやはり昔《むかし》のまゝの形《かたち》に造《つく》られたと思《おも》はれますし、ことに伊勢大神宮《いせだいじんぐう》や出雲《いづも》の大社《たいしや》のような神社《じんじや》は、ごく古《ふる》い/\時代《じだい》の日本《につぽん》の家《いへ》の形《かたち》をそのまゝに作《つく》ることゝなつてをつたのです。そして今日《こんにち》なほ大神宮《だいじんぐう》は[#「大神宮《だいじんぐう》は」は底本では「太神宮《だいじんぐう》は」]なんべん建《た》てかへても形《かたち》だけは昔《むかし》のまゝに、屋根《やね》は茅葺《かやぶ》き、柱《はしら》は掘立《ほつた》て、そして白木《しらき》のまゝで、高《たか》くちぎ[#「ちぎ」に傍点]とかつをぎ[#「かつをぎ」に傍点]が屋根《やね》の上《うへ》についてゐて、いかにも埴輪《はにわ》の家《いへ》の形《かたち》を思《おも》ひ出《だ》させるのは、なんと神々《かう/″\》しいことではありませんか。
[#「第七十六圖 日本朝鮮支那古瓦」のキャプション付きの図(fig18371_77.png)入る]
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     三、朝鮮《ちようせん》滿洲《まんしゆう》の古墳室《こふんしつ》

      (イ) 南朝鮮《みなみちようせん》の古墳《こふん》

 朝鮮《ちようせん》にも石器時代《せつきじだい》の遺物《いぶつ》が出《で》ることは、前《まへ》にお話《はなし》したのでありますが、その後《ご》今《いま》から二千年程前《にせんねんほどまへ》支那《しな》の周《しゆう》の末《すゑ》から漢《かん》の始《はじ》めにかけて、支那《しな》から金屬《きんぞく》の使用《しよう》が傳《つた》はつて來《き》て、青銅器《せいどうき》鐵器《てつき》の時代《じだい》となりましたのは、日本《につぽん》と大方《おほかた》同《おな》じ頃《ころ》であります。ところがちょうどこの石器《せつき》から金屬器《きんぞくき》にはひる頃《ころ》に、朝鮮《ちようせん》には大《おほ》きな石《いし》で造《つく》つた西洋《せいよう》の巨石記念物《きよせききねんぶつ》のどるめん[#「どるめん」に傍点]とよく似《に》た古墳《こふん》が、北《きた》から南《みなみ》の方《ほう》へかけて、造《つく》られました。それは日本《につぽん》にもちょっと見《み》られないすばらしい形《かたち》のもので、下部《かぶ》を長方形《ちようほうけい》の箱《はこ》のように造《つく》り、その大《おほ》きいものになると、上《うへ》に載《の》せてある一枚《いちまい》の天井石《てんじよういし》の長《なが》さが、三間以上《さんげんいじよう》にも及《およ》んでゐるものがあります。もっとも、かように大《おほ》きいものは、さうたくさんはありませんが、そのうちもっとも見事《みごと》なのは、北朝鮮《きたちようせん》の平安南道《へいあんなんどう》にあるものです。南朝鮮《みなみちようせん》の方
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