とう》と同《おな》じように水《みづ》を入《い》れて提《さ》げたものに違《ちが》ひはありません。ちょうど皆《みな》さんが遠足《えんそく》に行《ゆ》くときに用《もち》ひる水筒《すいとう》と同《おな》じものでありますが、これは初《はじ》めは獸《けだもの》の皮《かは》で作《つく》つた水袋《みづぶくろ》からその形《かたち》が出《で》て來《き》たのです。それで皮《かは》の縫《ぬ》ひめなどをちゃんと現《あらは》した、皮袋形《かはぶくろがた》の土器《どき》が時々《とき/″\》發見《はつけん》せられます。そのほか今日《こんにち》では使《つか》ひ方《かた》のわからないような品物《しなもの》もたくさん出《で》るのでありますが、これを前《まへ》に皆《みな》さんと一《いつ》しょに見《み》ました石器時代《せつきじだい》の土器《どき》に比《くら》べますと、大體《だいたい》があっさりとし、その飾《かざ》りにしても、ごて/\した[#「ごて/\した」は底本では「ごて/\し」]曲線模樣《きよくせんもよう》などはなく、その形《かたち》もたいてい一定《いつてい》してをります。かういふ點《てん》から見《み》ますと、これらの土器《どき》は恐《おそ》らく專門《せんもん》の土器製造人《どきせいぞうにん》が、その工場《こうば》で作《つく》つたのを各地《かくち》に賣《う》り出《だ》したものにちがひありません。それで美術的《びじゆつてき》な目的《もくてき》よりも、まったく實用的《じつようてき》になつたものが多《おほ》いことがわかります。(第七十二圖《だいしちじゆうにず》)
[#「第七十二圖 日本古墳發見祝部土器」のキャプション付きの図(fig18371_73.png)入る]
古墳《こふん》から普通《ふつう》發見《はつけん》せられるものは、今《いま》まで述《の》べたようなものでありますが、その他《ほか》に、時々《とき/″\》發見《はつけん》せられるものには、銅《どう》に金《きん》めっき[#「めっき」に傍点]をした冠《かんむり》や、また同《おな》じく銅製《どうせい》めっき[#「めっき」に傍点]の靴《くつ》があります。これは後《のち》ほどお話《はなし》をする朝鮮《ちようせん》の古墳《こふん》からも出《で》るもので、かような靴《くつ》や冠《かんむり》は、もちろん平生《へいぜい》使《つか》つたものでなく、儀式《ぎしき》のときなどに用《もち》ひたものでありませう。また今日《こんにち》の下駄《げた》によく似《に》て鼻緒《はなを》の前《まへ》の孔《あな》が右足《みぎあし》は左《ひだり》に、左足《ひだりあし》は右《みぎ》にかたよつて出來《でき》た石《いし》の下駄《げた》が出《で》て來《く》ることがあります。これも平生《へいぜい》は木《き》の下駄《げた》をはいたものでありませうが、この時分《じぶん》の人《ひと》は多《おほ》くは草履《ぞうり》や草鞋《わらぢ》のほかに皮《かは》で作《つく》つた靴《くつ》を履《は》き、またこんな形《かたち》の下駄《げた》を雨《あめ》ふりなどには履《は》いてゐたことがわかります。さうすると私共《わたしども》の下駄《げた》はずいぶん古《ふる》くからあることがわかつて、なんと面白《おもしろ》いではありませんか。また同《おな》じような石《いし》で作《つく》つた品物《しなもの》に鍬《くは》の形《かたち》をしたものや、腕輪《うでわ》の形《かたち》をしたものなどが出《で》て來《き》ますが、この中《なか》には果《はた》して何《なに》に使《つか》はれたものか、よくわからないものも多《おほ》くあるのです。(第七十三圖《だいしちじゆうさんず》)
[#「第七十三圖 日本古墳冠靴その他」のキャプション付きの図(fig18371_74.png)入る]
(リ) 建築《けんちく》、彫刻《ちようこく》、繪畫《かいが》など
私達《わたしたち》は今《いま》まで日本《につぽん》の古墳《こふん》と、その中《なか》から發見《はつけん》せられる樣々《さま/″\》の遺物《いぶつ》を見《み》てまゐりましたが、これ等《ら》の品物《しなもの》は、みなこの古《ふる》い時代《じだい》の人《ひと》の作《つく》つた美術品《びじゆつひん》工藝品《こうげいひん》であつて、このほかに別《べつ》に美術《びじゆつ》も工藝《こうげい》もないわけでありますが、いま改《あらた》めてそれ等《ら》のものから、特《とく》にこの時代《じだい》の建築《けんちく》はどんなものであつたか、彫刻《ちようこく》、繪畫《かいが》はどんなものであつたかを、述《の》べて見《み》ることにいたしませう。
第一《だいゝち》に建築《けんちく》は、古墳《こふん》の石室《せきしつ》なども一種《いつしゆ》の建築《けんちく》ではありますが、人間《にんげん》の住《す》み
前へ
次へ
全73ページ中63ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
浜田 青陵 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング