裝《ふくそう》なども、これによつて知《し》ることが出來《でき》ますから、なか/\大切《たいせつ》なものであります。次《つ》ぎに動物《どうぶつ》の像《ぞう》には馬《うま》が一等《いつとう》多《おほ》く、それには轡《くつわ》だとか鞍《くら》だとかの馬具《ばぐ》をつけてゐるところが見《み》られます。また脚《あし》の方《ほう》は、やはりたいてい筒形《つゝがた》になつて實際《じつさい》の馬《うま》の脚《あし》のようには作《つく》られてをりませんが、そこにかへって面白味《おもしろみ》があります。馬《うま》の他《ほか》動物《どうぶつ》の像《ぞう》には、牛《うし》だとか猿《さる》だとか猪《ゐのしゝ》だとか、また鴨《かも》や鷄《にはとり》などもあり、なか/\面白《おもしろ》いです。その他《た》のものには家《いへ》の形《かたち》もあり、その屋根《やね》には、今日《こんにち》私共《わたしども》が伊勢大神宮《いせだいじんぐう》の建築《けんちく》で見《み》るような、ちぎ[#「ちぎ」に傍点]やかつをぎ[#「かつをぎ」に傍点]を載《の》せてゐるのもありますが、また劍《つるぎ》や靫《ゆき》や巴《ともゑ》といふようなものを模《も》してあるのも發見《はつけん》されます。とにかくこの埴輪《はにわ》といふものは、なか/\面白《おもしろ》いもので、日本人《につぽんじん》の作《つく》つた一番《いちばん》古《ふる》い彫刻物《ちようこくぶつ》といふことが出來《でき》、昔《むかし》の人《ひと》の生活《せいかつ》や風俗《ふうぞく》を知《し》る上《うへ》に最《もつと》もよい材料《ざいりよう》の一《ひと》つであります。また埴輪《はにわ》のあることによつて、その塚《つか》のごく古《ふる》いこともわかるのでありますから、考古學《こうこがく》の研究上《けんきゆうじよう》非常《ひじよう》に大切《たいせつ》なものとせられてをりますが、何分《なにぶん》お墓《はか》の外《そと》に立《た》てゝあつたので、長《なが》い年月《としつき》の間《あひだ》に雨風《あめかぜ》にさらされて壞《こは》れてしまひ、完全《かんぜん》に殘《のこ》つてゐるものが極《きは》めて少《すくな》いのは殘念《ざんねん》なことであります。この部屋《へや》には、たゞ今《いま》お話《はなし》した人間《にんげん》や馬《うま》の埴輪《はにわ》の實物《じつぶつ》を始《はじ》め、今《いま》までに發見《はつけん》された面白《おもしろ》い埴輪《はにわ》の模型《もけい》などが陳列《ちんれつ》してありますから、よく御覽《ごらん》になつて、今後《こんご》古墳《こふん》を調《しら》べる時《とき》に、こんなものゝ破片《はへん》などが落《お》ちてゐるかどうかを注意《ちゆうい》されるように望《のぞ》みます。(第五十二《だいごじゆうに》、三《さん》、四圖《しず》)
[#「第五十五圖 石人」のキャプション付きの図(fig18371_56.png)入る]
また埴輪《はにわ》の人形《にんぎよう》や馬《うま》と同《おな》じ形《かたち》のものを、石《いし》で作《つく》つてお墓《はか》に立《た》てたこともありました。これを石人《せきじん》、石馬《せきば》などゝ申《まを》してをります。しかしこれは日本《につぽん》のごく一部《いちぶ》に行《おこな》はれたゞけで、九州《きゆうしゆう》の筑後《ちくご》や肥後《ひご》などに時々《とき/″\》見《み》ることが出來《でき》ます。筑後《ちくご》には昔《むかし》繼體天皇《けいたいてんのう》の御時《おんとき》、磐井《いはゐ》といふ強《つよ》い人《ひと》がをつて、朝鮮《ちようせん》の新羅《しらぎ》の國《くに》と同盟《どうめい》して、天皇《てんのう》の命《めい》に背《そむ》いたので、とう/\征伐《せいばつ》されてしまひましたが、この人《ひと》は生《い》きてゐる時分《じぶん》から、石《いし》でお墓《はか》を作《つく》り、石《いし》の人形《にんぎよう》などを立《た》てゝ、豪勢《ごうせい》を示《しめ》してゐたといふことが、古《ふる》い書物《しよもつ》にでてをります。ちょうどこの磐井《いはゐ》のをつた地方《ちほう》に、今《いま》も石人《せきじん》石馬《せきば》が多《おほ》く殘《のこ》つてゐるのは面白《おもしろ》いことです。(第五十五圖《だいごじゆうごず》)
(ハ) 石棺《せきかん》と石室《せきしつ》
古墳《こふん》の形《かたち》と、それから外側《そとがは》に立《た》つてゐた埴輪《はにわ》について、たゞいま一通《ひととほ》りお話《はなし》したのでありますが、これからは、古墳《こふん》の内部《ないぶ》にある石棺《せきかん》と石室《せきしつ》のお話《はなし》をいたしませう。日本《につぽん》の古墳《こふん》は元來《がんらい》小高《こだか》い丘《を
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