》で造《つく》つた人間像《にんげんぞう》や動物《どうぶつ》の像《ぞう》を墓側《はかそば》に立《た》てる風俗《ふうぞく》を聞《き》いて、それを土《つち》で作《つく》ることに考《かんが》へついたのかも知《し》れません。この野見宿禰《のみのすくね》といふ人《ひと》は、あの相撲《すまふ》をはじめたといはれてゐる同《おな》じ人《ひと》であります。とにかく埴輪《はにわ》といふものが垂仁天皇《すいにんてんのう》の御代前後《みよぜんご》から始《はじ》まつて、四五百年《しごひやくねん》ぐらゐもつゞいたことは確《たしか》らしいのであります。この埴輪《はにわ》といふ言葉《ことば》の埴《はに》といふのは粘土《ねんど》といふことで、輪《わ》といふのは輪《わ》の形《かたち》に竝《なら》べることから出《で》た名前《なまへ》だといふことであります。それで私共《わたしども》が古墳《こふん》へ行《い》つても、埴輪《はにわ》の人形《にんぎよう》や、筒形《つゝがた》のものゝ破片《はへん》などが發見《はつけん》された時《とき》には、その塚《つか》がごく古《ふる》いこの時代《じだい》のものであることを、推定《すいてい》することが出來《でき》るのであります。
[#「第五十二圖 日本古墳埴輪人物」のキャプション付きの図(fig18371_53.png)入る]
さて埴輪《はにわ》の筒形《つゝがた》のものは、墓《はか》の丘《をか》のまはり、時《とき》には堀《ほり》の外側《そとがは》の土手《どて》にも、一重《ひとへ》二重《ふたへ》あるひは三重《みへ》にも、取《と》り繞《めぐ》らされたのであり、また塚《つか》の頂上《ちようじよう》には家形《いへがた》や、それに似《に》た大《おほ》きな埴輪《はにわ》を置《お》いたものであることは、今《いま》までもわかつてをりましたが、人間《にんげん》や動物《どうぶつ》の埴輪《はにわ》などはどこへ立《た》てたものか、はっきりしたことが、わからなかつたのであります。ところが、最近《さいきん》に上野《かうづけ》の國《くに》のある前方後圓《ぜんぽうこうえん》の古墳《こふん》では、周圍《しゆうい》の堀《ほり》の外側《そとがは》、ちょうど墓《はか》の前《まへ》のところに、筒形《つゝがた》のものを長《なが》い間《あひだ》二重《ふたへ》に竝《なら》べ、その一部分《いちぶぶん》に人間《にんげん》や馬《うま》や鳥《とり》の埴輪《はにわ》を集《あつ》めて立《た》てたのが發見《はつけん》されました。また、ある圓形《えんけい》の墓《はか》では塚《つか》のまはりに筒形《つゝがた》を竝《なら》べ、その前《まへ》のところに人形《にんぎよう》を立《た》てゝあるのが掘《ほ》り出《だ》されました。それでだいぶよくわかつて來《き》ましたが、つまり墓《はか》の前《まへ》とか、墓《はか》の周《まは》りの要所々々《ようしよ/\》と思《おも》はれるところに、人間《にんげん》や馬《うま》や鳥《とり》などの像《ぞう》を竝《なら》べたものに相違《そうい》ありません。
[#「第五十三圖 日本古墳埴輪動物」のキャプション付きの図(fig18371_54.png)入る]
[#「第五十四圖 日本古墳家形埴輪その他」のキャプション付きの図(fig18371_55.png)入る]
さてこの埴輪《はにわ》はどういふ燒《や》き物《もの》かといひますと、細《ほそ》い刷毛目《はけめ》の線《せん》のはひつた赤色《あかいろ》の素燒《すや》きでありまして、人間《にんげん》の像《ぞう》はたいてい二三尺《にさんじやく》くらゐの高《たか》さで、男子《だんし》もあり婦人《ふじん》もあります。そして男子《だんし》のものには、身《み》に甲胄《かつちゆう》をつけ劍《つるぎ》を佩《は》いてゐる勇《いさ》ましい形《かたち》をしたのがあり、婦人《ふじん》の像《ぞう》には、髮《かみ》を結《むす》びたすき[#「たすき」に傍点]をかけ、何《なに》か品物《しなもの》を捧《さゝ》げてゐるようなのもあります。そして顏《かほ》には赤《あか》い紅《べに》を塗《ぬ》つたのだとか、少《すこ》し口元《くちもと》を歪《ゆが》めて悲《かな》しそうな表情《ひようじよう》をしたものもあります。いづれも至《いた》つて粗末《そまつ》な簡單《かんたん》な人形《にんぎよう》で、脚《あし》の方《ほう》はたいてい一本《いつぽん》の筒形《つゝがた》になり、足《あし》の先《さき》まで現《あらは》してあるのは稀《まれ》であります。しかし、そのうちに、なんともいへない無邪氣《むじやき》な顏《かほ》つきや樣子《ようす》をしてゐるところなど、いかにも昔《むかし》の人《ひと》の飾《かざ》り氣《け》のない心《こゝろ》が窺《うかゞ》はれるばかりでなく、當時《とうじ》の人《ひと》の風俗《ふうぞく》だとか服
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