時代《じだい》になりましたが、東北地方《とうほくちほう》にはその後《ご》長《なが》く、石器時代《せつきじだい》の文化《ぶんか》が殘《のこ》つてゐたものと思《おも》はれます。
さて日本《につぽん》に、青銅《せいどう》が傳《つた》はつて、どういふものがまづ造《つく》られたかと申《まを》しますに、初《はじ》めはむろん支那《しな》あたりで造《つく》られた品物《しなもの》がそのまゝ持《も》つて來《こ》られたものと見《み》え、細《ほそ》い形《かたち》の銅劍《どうけん》などは支那《しな》のものとまったく同《おな》じものが日本《につぽん》からも出《で》て來《き》ます。だん/\月日《つきひ》の經《へ》るに從《したが》つて日本《につぽん》でも青銅器《せいどうき》を造《つく》るようになつたのでありますが、材料《ざいりよう》はやはり多《おほ》くは支那《しな》から持《も》つて來《き》たものでありまして、時《とき》には支那《しな》から輸入《ゆにゆう》した古錢《こせん》を鑄《ゐ》つぶして、他《ほか》の品物《しなもの》を造《つく》つたかも知《し》れません。今《いま》では銅貨《どうか》は補助貨幣《ほじよかへい》でありまして、本當《ほんとう》の價値《かち》だけ重分量《じゆうぶんりよう》をもつてをりませんけれども、昔《むかし》は支那《しな》などでは、銅貨《どうか》が主《おも》な貨幣《かへい》でありましたから、地金《じがね》と同《おな》じだけの價値《かち》があつたのです。ですからそれを地金《じがね》として鑄《ゐ》つぶしたのはむりではないと思《おも》はれます。日本《につぽん》で最初《さいしよ》造《つく》られた銅器《どうき》は前《まへ》よりは幅《はゞ》の廣《ひろ》い銅《どう》の劍《つるぎ》や鉾《ほこ》の類《るい》でありまして、その一《ひと》つはくりす[#「くりす」に傍点]型《がた》といふ劍《つるぎ》で、この劍《つるぎ》はつば[#「つば」に傍点]に當《あた》るところが斜《なゝめ》にまがつてゐます。これは支那《しな》の『戈《か》』といふ武器《ぶき》と同《おな》じように、劍《つるぎ》の頭《かしら》を柄《つか》に直角《ちよつかく》に横《よこ》にくっつけて使《つか》つたものと思《おも》はれるのであります。その次《つ》ぎは銅鉾《どうほこ》といふもので、幅《はゞ》の廣《ひろ》い大型《おほがた》のものでありまして、實用《じつよう》に使《つか》つたものでなく、何《なに》か儀式《ぎしき》にでも用《もち》ひたものと見《み》え、刃《やいば》のところも鋭《するど》くはなく、實際《じつさい》に使用《しよう》するものとしてはあまり大《おほ》きすぎるのです。(第四十七圖《だいしじゆうしちず》)これらの物《もの》が、日本《につぽん》で造《つく》られたといふ證據《しようこ》には、それを造《つく》る時《とき》に用《もち》ひた石《いし》の型《かた》が發見《はつけん》されるのでわかるのであります。この劍《つるぎ》や鉾《ほこ》の類《るい》は九州《きゆうしゆう》が最《もつと》も多《おほ》く發見《はつけん》されます。その他《た》では中國《ちゆうごく》や四國《しこく》などで出《で》るばかりで、東《ひがし》の方《ほう》東北地方《とうほくちほう》には今日《こんにち》までまだ一《ひと》つも發見《はつけん》されてをりません。とにかく支那《しな》のものと深《ふか》い關係《かんけい》のあることはたしかです。また石《いし》でもつてこの銅劍《どうけん》などの形《かたち》を作《つく》つたものが時々《とき/″\》發見《はつけん》せられますが、やはりこの時代《じだい》のものと思《おも》はれます。(第四十九圖《だいしじゆうくず》)
[#「第四十七圖 日本青銅器」のキャプション付きの図(fig18371_49.png)入る]
次《つ》ぎに、大體《だいたい》この頃《ころ》のものと思《おも》はれる銅器《どうき》に、銅鐸《どうたく》といふものがあります。これは少《すこ》し平《ひら》たい釣《つ》り鐘《がね》のような形《かたち》をしたもので、小《ちひ》さいものは四五寸《しごすん》、大《おほ》きいものになると四五尺《しごしやく》もあり、すてきに大《おほ》きなものであります。その表面《ひようめん》には袈裟襷《けさだすき》といつて、坊《ぼう》さんの袈裟《けさ》のように格子型《かうしがた》に區畫《くかく》した模樣《もよう》をつけたものや、また流水紋《りゆうすいもん》といつて長《なが》い渦卷《うづま》きの模樣《もよう》をつけたものもあり、時《とき》には人間《にんげん》や動物《どうぶつ》の形《かたち》を簡單《かんたん》に現《あらは》したものがついてをります。この銅鐸《どうたく》は今《いま》まで古墳《こふん》から出《で》たことはなく、岩《いわ》の間《あひだ》や、山
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