《やま》かげなどからひょこっと出《で》るのが普通《ふつう》であり、そしてたくさんの數《かず》が一度《いちど》に出《で》ることも時々《とき/″\》あります。また九州地方《きゆうしゆうちほう》からは一《ひと》つも出《で》たことはなく、主《おも》に畿内《きない》から東海道方面《とうかいどうほうめん》にかけて多《おほ》く發見《はつけん》されるのであります。銅鐸《どうたく》はその形《かたち》が、釣《つ》り鐘《がね》のようでありますから、やはり樂器《がつき》ではあるまいかといふ人《ひと》もありますが、さて樂器《がつき》に使《つか》つた跡《あと》も見《み》られませんので、何《なに》か寶物《ほうもつ》として持《も》つてゐたものだらうと考《かんが》へるより仕方《しかた》がありません。劍《つるぎ》や鉾《ほこ》のように、これを鑄《ゐ》た型《かた》が日本《につぽん》では發見《はつけん》されないので、あるひは支那《しな》の方《ほう》から輸入《ゆにゆう》したものだらうといはれますが、支那《しな》には、これと同《おな》じ品物《しなもの》がありませんので、やはり日本《につぽん》で造《つく》つたとするより外《ほか》はないのであります。(第四十八圖《だいしじゆうはちず》)
[#「第四十八圖 日本銅鐸」のキャプション付きの図(fig18371_50.png)入る]
まづ今《いま》お話《はなし》したように、劍《つるぎ》と鉾《ほこ》と、それから銅鐸《どうたく》などが、青銅《せいどう》が初《はじ》めて日本《につぽん》へはひつた時分《じぶん》の遺物《いぶつ》でありますが、支那《しな》ではすでに漢《かん》の時代《じだい》から盛《さか》んに鐵《てつ》が使用《しよう》されるようになつてゐたので、日本《につぽん》へも間《ま》もなく鐵《てつ》がはひつて來《き》て、刀《かたな》その他《た》の武器《ぶき》に鐵《てつ》を用《もち》ひることゝなりました。それでヨーロッパの諸國《しよこく》や支那《しな》のように青銅器《せいどうき》の時代《じだい》といふものを區別《くべつ》するほどの間《あひだ》もなく、すぐに鐵器《てつき》の時代《じだい》に移《うつ》つてしまつたのです。そして日本《につぽん》は歴史《れきし》のある時代《じだい》にはひつて、われ/\の祖先《そせん》の遺《のこ》した品物《しなもの》が、だん/\と現《あらは》れて來《く》るのであります。皆《みな》さん、こゝにある銅劍《どうけん》や銅鉾《どうほこ》や銅鐸《どうたく》などを一巡《いちじゆん》御覽《ごらん》になつたら、次《つ》ぎの室《しつ》に行《ゆ》くことにいたしませう。
[#「第四十九圖 日本及び朝鮮石劍」のキャプション付きの図(fig18371_51.png)入る]
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二、日本原史時代室《につぽんげんしじだいしつ》
(イ) 日本《につぽん》の古墳《こふん》
石《いし》の器物《きぶつ》ばかりを使《つか》つてゐた石器時代《せつきじだい》から、次《つ》ぎには少《すこ》しづゝ金屬《きんぞく》の器物《きぶつ》を用《もち》ひた時期《じき》を過《す》ぎて、日本《につぽん》も遂《つひ》に金屬《きんぞく》の利器《りき》を主《おも》に使用《しよう》するいはゆる金屬時代《きんぞくじだい》にはひりました。そしてその金屬《きんぞく》は前《まへ》にも申《まを》したとほり、青銅《せいどう》だけを使用《しよう》した時代《じだい》は極《きは》めて短《みじか》く、あるひはほとんどないくらゐで、すぐに鐵《てつ》を使《つか》ふ時代《じだい》になつたのであります。これと同時《どうじ》に、日本《につぽん》は歴史《れきし》のない時代《じだい》から、少《すこ》しづゝ歴史《れきし》がわかる時代《じだい》になつて來《き》たのであります。かようにまだ歴史《れきし》が十分《じゆうぶん》に明《あきら》かではないが、ぼんやりわかつて來《き》た時代《じだい》を、われ/\は原史時代《げんしじだい》といふのであります。
日本《につぽん》の石器時代《せつきじだい》の遺物《いぶつ》を殘《のこ》した人間《にんげん》は、どういふ人種《じんしゆ》であつたかといふことについてはいろ/\議論《ぎろん》がありますが、この原史時代《げんしじだい》にはひつて金屬《きんぞく》の器物《きぶつ》を使《つか》つてゐた人間《にんげん》になりますと、今日《こんにち》のわれ/\と同《おな》じ日本人《につぽんじん》であつたことが疑《うたが》ひないのであります。さてこの時代《じだい》の日本人《につぽんじん》の殘《のこ》した遺跡《いせき》には、どんなものがあるかと申《まを》しますと、古《ふる》くから石《いし》や煉瓦《れんが》で家屋《かおく》を造《つく》つた外國《がいこく》などでは、家屋《かおく
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