《はつたつ》をしてをつた民族《みんぞく》が住《す》んでゐたものと見《み》なければなりません。それが石器時代《せつきじだい》の終《をは》り頃《ごろ》になつて、支那朝鮮《しなちようせん》を經《へ》て金屬《きんぞく》の器物《きぶつ》を使《つか》ふことが日本《につぽん》に傳《つた》へられまして、初《はじ》めて日本《につぽん》と支那《しな》あたりの間《あひだ》に深《ふか》い關係《かんけい》が生《しよう》ずるようになるのであります。それらを證據立《しようこだ》てる品物《しなもの》は、次《つ》ぎの室《しつ》に竝《なら》べてありますから、そこへ行《ゆ》くことにいたしませう。
(ヘ) 青銅器《せいどうき》と銅鐸《どうたく》
今《いま》まで申《まを》した日本《につぽん》の石器時代《せつきじだい》は、幾年《いくねん》ほどつゞいたかといふことは、確《たしか》にはわかりませんが、けっして二百年《にひやくねん》や三百年《さんびやくねん》の短《みじか》い期間《きかん》ではなくて、あるひは千年《せんねん》にも近《ちか》い長《なが》い間《あひだ》のことゝ思《おも》はれます。そして石器時代《せつきじだい》の文明《ぶんめい》もだん/\進《すゝ》んで來《き》ましたが、ちょうど今《いま》から三千年《さんぜんねん》ほど前《まへ》に、お隣《とな》りの支那《しな》では周《しゆう》の末《すゑ》から漢《かん》の初《はじ》めにかけて、支那人《しなじん》の勢力《せいりよく》が非常《ひじよう》に盛《さか》んになつて、どし/\各地《かくち》へ植民《しよくみん》をしだしたと共《とも》に、今《いま》まですでに用《もち》ひてゐたところの金屬《きんぞく》、銅《どう》や青銅《せいどう》で造《つく》つた器物《きぶつ》の使用《しよう》が東亞《とうあ》の諸國《しよこく》へ擴《ひろ》められることになりました。その結果《けつか》滿洲《まんしゆう》から朝鮮《ちようせん》日本《につぽん》に及《およ》び、それで日本《につぽん》も初《はじ》めて支那《しな》の金屬《きんぞく》を傳《つた》へて、石器時代《せつきじだい》の文化《ぶんか》から金屬器時代《きんぞくきじだい》の文化《ぶんか》に進《すゝ》むことになりました。それでは支那《しな》から日本《につぽん》へ金屬《きんぞく》が傳來《でんらい》したことが、なぜわかるかといひますと、それはちょうどその頃《ころ》支那《しな》に出來《でき》た古《ふる》い錢《ぜに》が、一《いつ》しょに發見《はつけん》されるからであります。その古錢《こせん》は小刀《こがたな》の形《かたち》をした刀錢《とうせん》や鍬《くは》の形《かたち》をした布泉《ふぜん》といふものでありまして、それが周《しゆう》の終《をは》り頃《ごろ》に出來《でき》た錢《ぜに》であるといふので、年代《ねんだい》が確《たしか》にきめられるのであります。日本《につぽん》には滿洲《まんしゆう》や北朝鮮《きたちようせん》よりも少《すこ》し後《おく》れて金屬《きんぞく》がはひつて來《き》たらしく思《おも》はれますが、それは今《いま》から二千年《にせんねん》ほど前《まへ》支那《しな》の王莽《おうもう》の頃《ころ》出來《でき》た貨泉《かせん》といふ錢《ぜに》が時々《とき/″\》出《で》るのでわかります。しかし金屬《きんぞく》がはひつて來《き》たからとてすぐに今《いま》までの石器《せつき》を悉《こと/″\》く捨《す》てゝ全部《ぜんぶ》金屬器《きんぞくき》を使《つか》ふようになつたのではありません。金屬《きんぞく》も最初《さいしよ》は分量《ぶんりよう》が僅《わづ》かで、貴重品《きちようひん》とせられてをつたのが、年《とし》を經《へ》てだん/\石器《せつき》に代《かは》つて行《い》つたのであり、初《はじ》めは石器《せつき》と同時《どうじ》に使用《しよう》せられてゐたものに相違《そうい》ありません。かういふ時代《じだい》を私共《わたしども》は金石併用期《きんせきへいようき》と呼《よ》んでをります。
[#「第五十圖 支那古錢」のキャプション付きの図(fig18371_48png)入る]
いま申《まを》したように、日本《につぽん》へ青銅器《せいどうき》がはひつて來《き》たのは支那《しな》からでありまして、それは多分《たぶん》滿洲朝鮮《まんしゆうちようせん》の海岸《かいがん》を經《へ》てはひつて來《き》たものと思《おも》はれますから、從《したが》つて日本《につぽん》では一番《いちばん》西《にし》の九州《きゆうしゆう》に初《はじ》めて傳《つた》はつたものと考《かんが》へられます。それがだん/\に東《ひがし》へ東《ひがし》へと進《すゝ》んで行《ゆ》きまして、五畿内地方《ごきないちほう》からその附近《ふきん》が金屬《きんぞく》を用《もち》ひる
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