》はやはり日本《につぽん》の彌生式《やよひしき》に近《ちか》い種類《しゆるい》のものが普通《ふつう》でありまして、時《とき》には珍《めづら》しく、だんだら模樣《もよう》に彩色《さいしき》した美《うつく》しいものが出《で》ることもあります。支那《しな》では、また太《ふと》い三本脚《さんぼんあし》のついたれき[#「れき」に傍点](鬲)という形《かたち》の土器《どき》が出《で》ますが、これは支那《しな》や支那《しな》の文化《ぶんか》の影響《えいきよう》を受《う》けた地方《ちほう》に限《かぎ》つて出《で》るのであつて、やはり滿洲《まんしゆう》からも出《で》ます。支那内地《しなないち》の石器時代《せつきじだい》のことはまだよく調《しら》べがついてゐませんが、山東省《さんとうしよう》や陝西省《せんせいしよう》その他《た》からも石器《せつき》が出《で》て來《き》ます。いまお話《はなし》した滿洲《まんしゆう》より出《で》るのと同《おな》じように、孔《あな》のあいた石斧《せきふ》などであります。土器《どき》では三本脚《さんぼんあし》のれき[#「れき」に傍点]などでありますが、近頃《ちかごろ》にいたつて河南省《かなんしよう》や甘肅省《かんしゆくしよう》あたりでは、墨色《すみいろ》の繪《え》の具《ぐ》で模樣《もよう》を描《か》いた美《うつく》しい土器《どき》が、石器《せつき》と一《いつ》しょにたくさんに發見《はつけん》されますが、これは石器時代《せつきじだい》の末期《まつき》にあつたものと思《おも》はれます。この土器《どき》は、滿洲《まんしゆう》から出《で》る彩色《さいしき》の土器《どき》とは違《ちが》つてゐて、餘程《よほど》西《にし》の方《ほう》の國《くに》から出《で》るものに似《に》てゐるところがありますから、古《ふる》く西方諸國《せいほうしよこく》の文明《ぶんめい》が支那《しな》へ入《い》りこんだものといふことが想像《そう/″\》されて面白《おもしろ》いものであります。(第四十六圖《だいしじゆうろくず》)
[#「第四十六圖 支那新石器時代土器」のキャプション付きの図(fig18371_47.png)入る]
支那《しな》では、たゞ今《いま》申《まを》したように新石器時代《しんせつきじだい》のものが出《で》るばかりではなく、その北方《ほつぽう》黄河《こうが》の流《なが》れが北《きた》へ曲《まが》つて、また南《みなみ》へをれて來《く》るあたりでは、近年《きんねん》舊石器時代《きゆうせつきじだい》の古《ふる》い遺物《いぶつ》が發見《はつけん》されるといふことでありますし、なほ北方《ほつぽう》のシベリヤの南部《なんぶ》においても、舊石器時代《きゆうせつきじだい》のものが現《あらは》れて來《き》たところから見《み》ますと、支那《しな》にも古《ふる》く舊石器時代《きゆうせつきじだい》から人間《にんげん》が棲《す》んでゐたことがわかるのであります。しかし、何分《なにぶん》支那《しな》は廣《ひろ》い國《くに》でありますし、またその東部《とうぶ》は大河《たいが》の流《なが》した泥《どろ》だとか、風《かぜ》が吹《ふ》き送《おく》つてきた小《ちひ》さい砂《すな》だとかゞつもつて、非常《ひじよう》にそれが深《ふか》いために、その下《した》に石器時代《せつきじだい》のものがあるのですから容易《ようい》に調《しら》べがつかず、今日《こんにち》までよく知《し》られてをりません。それで、將來《しようらい》われ/\が一《いつ》しょう懸命《けんめい》に調《しら》べて行《い》つたら、きっと面白《おもしろ》いことが發見《はつけん》されることゝ信《しん》じます。
それからもと支那《しな》の領地《りようち》であつて、今《いま》は日本《につぽん》の一部《いちぶ》になつた臺灣《たいわん》にも石器時代《せつきじだい》の遺物《いぶつ》が出《で》ますが、支那《しな》から出《で》るものとよく似《に》てをります。しかし琉球《りゆうきゆう》のものになりますと、臺灣《たいわん》とは似《に》ないで、日本内地《につぽんないち》の繩紋式土器《じようもんしきどき》と同《おな》じ性質《せいしつ》の土器《どき》と一《いつ》しょに出《で》るのであります。
以上《いじよう》述《の》べましたように、支那《しな》や朝鮮《ちようせん》の石器時代《せつきじだい》のものは、その土器《どき》の上《うへ》から見《み》て、日本《につぽん》のものとは關係《かんけい》を有《ゆう》してゐないようでありますが、たゞ彌生式土器《やよひしきどき》のようなものになつて始《はじ》めて少《すこ》し似《に》て來《く》るといふのでありますから、まづ石器時代《せつきじだい》には、日本《につぽん》は朝鮮《ちようせん》や支那《しな》とは獨立《どくりつ》の發達
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