》にはまつたものばかりであります。顏《かほ》でも眼《め》鼻《はな》口《くち》と明《あきら》かに區別《くべつ》されてゐないのが普通《ふつう》であります。男《をとこ》と女《をんな》の別《べつ》は現《あらは》されてゐますが、ことに女《をんな》の土偶《どぐう》がたくさんにありますのは、この時分《じぶん》には女《をんな》の神《かみ》さまを崇拜《すうはい》したゝめに造《つく》つたものだといふ學者《がくしや》もあります。とにかく、何《なに》か宗教上《しゆうきようじよう》のために造《つく》つたもので、玩具《がんぐ》ではなかつたようです。もし玩具《がんぐ》だつたら、人間《にんげん》の形《かたち》をそのまゝ寫《うつ》したものにしなければならないと思《おも》ひます。土偶《どぐう》の他《ほか》に熊《くま》だとか猿《さる》だとかの獸類《じゆうるい》をつくつたものも稀《まれ》には出《で》ることがありますが、これは玩具《がんぐ》と見《み》えて、よくその形《かたち》がそれらの動物《どうぶつ》に似《に》てをります。とにかく日本《につぽん》の石器時代《せつきじだい》の土器《どき》は、外國《がいこく》の石器時代《せつきじだい》の土器《どき》に比《くら》べて、餘程《よほど》進歩《しんぽ》し巧妙《こうみよう》に造《つく》られてをり、日本《につぽん》の石器時代《せつきじだい》の人間《にんげん》は、土器《どき》を造《つく》ることが上手《じようず》でもあり、好《す》きでもあつたと思《おも》はれます。(第四十三圖《だいしじゆうさんず》)
[#「第四十三圖 日本石器時代土偶」のキャプション付きの図(fig18371_44.png)入る]
今《いま》まで述《の》べた土器《どき》の話《はなし》は、主《しゆ》として關東《かんとう》から奧羽地方《おううちほう》において出《で》る土器《どき》について申《まを》したのでありますが、關西地方《かんさいちほう》、あるひはその他《た》の地方《ちほう》から、少《すこ》しくこれと違《ちが》つた種類《しゆるい》の土器《どき》が石器《せつき》と共《とも》に發見《はつけん》せられます。その石器《せつき》には餘《あま》り變《かは》りはありませんが、たゞ石庖丁《いしほうちよう》だとか刳《ゑぐ》りのある石斧《せきふ》などが、どちらかといふと多《おほ》く出《で》て來《き》ます。これは、前《まへ》の黒《くろ》ずんだ色《いろ》の土器《どき》とは異《こと》なつて、たゞの茶色《ちやいろ》の土器《どき》です。(第四十四圖《だいしじゆうしず》)それは作《つく》る時《とき》の窯《かまど》が、前《まへ》のものより進歩《しんぽ》して、燒《や》く時《とき》に燻《いぶ》されなかつたからでありまして、土器《どき》の製作法《せいさくほう》が一段《いちだん》進《すゝ》んだものと見《み》られますが、その土器《どき》の形《かたち》からいひますと、前《まへ》のものほど多《おほ》くの種類《しゆるい》がありません。壺《つぼ》とか鉢《はち》とかきまつた形《かたち》のものばかりでありまして、ことに壺《つぼ》には尻《しり》の方《ほう》が、つぼんだ無花果《いちじゆく》のような形《かたち》をしたものが多《おほ》いのです。また模樣《もよう》はたいていありません。よしありましても、直線《ちよくせん》などを細《ほそ》く切《き》り込《こ》んだもので、前《まへ》に述《の》べた土器《どき》のように、曲線《きよくせん》だとか繩《なは》だとか莚《むしろ》だとかの形《かたち》を押《お》したものは見當《みあた》りません。一般《いつぱん》に形《かたち》や模樣《もよう》は單純《たんじゆん》であつて、前《まへ》のものほど複雜《ふくざつ》でないといふことが出來《でき》ます。しかも同《おな》じ形《かたち》をした土器《どき》が同時《どうじ》に多《おほ》く出《で》て來《き》ますところを見《み》ますと、これらの土器《どき》は、今日《こんにち》のように工業的《こうぎようてき》に製造《せいぞう》せられたものと想像《そう/″\》することが出來《でき》ます。私共《わたしども》はこの種《しゆ》の土器《どき》を彌生式土器《やよひしきどき》と呼《よ》んでをりますが、それは最初《さいしよ》東京本郷《とうきようほんごう》の帝國大學《ていこくだいがく》の裏《うら》の所《ところ》に當《あた》る彌生町《やよひちよう》にあつた貝塚《かひづか》から出《で》た土器《どき》から名《な》を取《と》つたのです。これに對《たい》し前《まへ》の形《かたち》の土器《どき》を繩文式土器《じようもんしきどき》と稱《しよう》してをります。かように二《ふた》つの土器《どき》の種類《しゆるい》があつて、互《たがひ》に違《ちが》つてゐるのは、これを作《つく》つた民族《みんぞく》の人種《じんしゆ》が
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