ん》の人々《ひと/″\》がどんな宗教上《しゆうきようじよう》の考《かんが》へをもつてゐたかといふこともわかり、またその體《からだ》につけてゐた種々《しゆ/″\》の裝飾《そうしよく》で、當時《とうじ》の風俗《ふうぞく》を知《し》るばかりでなく、その骨《ほね》を調《しら》べて、どんな人種《じんしゆ》に屬《ぞく》してゐたかといふことが考《かんが》へられるのでありまして、それが今《いま》お話《はなし》した石器時代《せつきじだい》の人種《じんしゆ》がなんであるかといふことの第一《だいゝち》の材料《ざいりよう》となるのでありますから、この墓地《ぼち》の研究《けんきゆう》は、貝塚《かひづか》などよりも一《いつ》そう大切《たいせつ》なものになつて來《く》るのであります。
(ハ) 石器《せつき》と骨角器《こつかくき》
日本《につぽん》の貝塚《かひづか》やその他《た》の石器時代《せつきじだい》の遺蹟《いせき》から發見《はつけん》される石器《せつき》は非常《ひじよう》な數《すう》であつて、よくもこんなにたくさん石器《せつき》があるものかと驚《おどろ》くくらゐあります。なぜそんなに多《おほ》くの石器《せつき》が遺《のこ》つてゐるかといふに、その後《ご》の時代《じだい》に使用《しよう》された金屬《きんぞく》の器物《きぶつ》になりますと、土《つち》の中《なか》で腐《くさ》つてしまつてなくなつたり、あるひは腐《くさ》つてゐないものは拾《ひろ》つて他《ほか》の器物《きぶつ》に造《つく》り直《なほ》したりするといふことがある上《うへ》に、昔《むかし》の人《ひと》がはじめから石器《せつき》のように惜《を》し氣《げ》もなく捨《す》てることをしなかつたのです。しかるに石器《せつき》は土《つち》の中《なか》にあつても腐《くさ》ることはなく、また他《ほか》の器物《きぶつ》に改造《かいぞう》することもほとんど出來《でき》ないのでありますから、昔《むかし》から石器《せつき》には餘《あま》り注意《ちゆうい》する者《もの》がなかつたのであります。また石器時代《せつきじだい》の人《ひと》も一度《いちど》石器《せつき》が破損《はそん》した場合《ばあひ》には、たいてい捨《す》てゝしまひ、これを改造《かいぞう》するようなことはなかつた。これが今日《こんにち》多《おほ》くの石器《せつき》が發見《はつけん》される理由《りゆう》の一《ひと》つでありまして、お蔭《かげ》で私共《わたしども》が皆《みな》さんと共《とも》に石器《せつき》を探《さが》しに行《い》つても、獲物《えもの》があるわけです。
石器《せつき》には種々《しゆ/″\》の種類《しゆるい》がありますが、その棚《たな》に一《ひと》つ一《ひと》つ品物《しなもの》の種類《しゆるい》によつて分類《ぶんるい》して竝《なら》べてありますから、これからだん/\それを見《み》て行《ゆ》きませう。まづ第一《だいゝち》は斧《をの》の形《かたち》をしたものであります。これを石斧《せきふ》と呼《よ》んでゐますが、長《なが》さはたいてい五六寸《ごろくすん》あるひは二三寸《にさんずん》ぐらゐのもので、形《かたち》は御覽《ごらん》のとほり長方形《ちようほうけい》であつて一方《いつぽう》の端《はし》を削《けづ》つて鋭《するど》くしてありますが、たいていは兩面《りようめん》から磨《みが》いて、ちょうど蛤《はまぐり》の口《くち》のようになつてをります。ですから物《もの》を打《う》ち切《き》るためには餘《あま》り良《よ》く切《き》れるものとは思《おも》はれません。また刃先《はさき》が少《すこ》し廣《ひろ》がつて三味線《さみせん》の撥《ばち》のようになつてゐるのもあり、刃《やいば》を一方《いつぽう》からつけた鑿《のみ》のような形《かたち》をしてゐるのもあります。それらの斧《をの》には横側《よこがは》に刳《ゑぐ》りを入《い》れたものが多《おほ》いのであります。これらの石斧《せきふ》は皆《みな》よく磨《みが》いて滑《なめら》かに光《ひか》るように出來《でき》て、非常《ひじよう》に精巧《せいこう》な造《つく》り方《かた》であります。中《なか》には長《なが》さが一寸《いつすん》ぐらゐもない、小《ちひ》さい美《うつく》しい石《いし》で造《つく》つた斧《をの》がありますが、それは實際《じつさい》の役《やく》に立《た》つものとは思《おも》はれません。多分《たぶん》大切《たいせつ》な寶物《ほうもつ》の類《るい》であつたのでせう。またこれとは反對《はんたい》に、一尺《いつしやく》にも近《ちか》い斧《をの》がありますが、これもまだどうも實用《じつよう》には不適當《ふてきとう》です。おそらく寶物《ほうもつ》か、あるひは石斧《せきふ》を造《つく》る家《いへ》の看板《かんばん》で
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