つたのでありますが、それがだん/\使用《しよう》に便利《べんり》な形《かたち》にかへて行《い》つたのです。また銅《どう》に錫《すゞ》をまぜると鑄《ゐ》るのに容易《ようい》で、しかも堅《かた》くつて丈夫《じようぶ》であるといふことも、最初《さいしよ》は偶然《ぐうぜん》に知《し》つたらしいのでありますが、幾度《いくど》かの經驗《けいけん》で銅《どう》九分《くぶ》に錫《すゞ》一分《いちぶ》をまぜあはすと、器物《きぶつ》としてはつごうが良《よ》いことをも知《し》つたので、青銅器時代《せいどうきじだい》の終《をは》り頃《ごろ》には、混合《こんごう》の歩合《ぶあひ》がたいていこのわりあひになつてをります。かのエヂプトの進《すゝ》んだ文明《ぶんめい》も使用《しよう》した器物《きぶつ》からいへば、青銅《せいどう》を一般《いつぱん》に多《おほ》く用《もち》ひてゐます。またギリシヤの文明《ぶんめい》の開《ひら》ける前《まへ》に、クリートの嶋《しま》やその附近《ふきん》において發達《はつたつ》した文明《ぶんめい》も、やはり青銅器《せいどうき》の時代《じだい》に屬《ぞく》するのでありました。ヨーロッパでは南《みなみ》の方《ほう》には早《はや》く鐵《てつ》がはひつて來《き》ましたが、北方《ほつぽう》のデンマルクやスエーデンやノールウエなどでは、鐵《てつ》のはひつて來《く》るのが大分《だいぶ》遲《おそ》かつたがために、かへって青銅《せいどう》で器物《きぶつ》を造《つく》ることが發達《はつたつ》して、すばらしい青銅器《せいどうき》が多《おほ》く出來《でき》てゐます。御覽《ごらん》なさい、この壁《かべ》にかけてある青銅器《せいどうき》を見《み》て行《ゆ》きますと、初《はじ》めは石《いし》の斧《をの》から同《おな》じ形《かたち》の銅《どう》の斧《をの》になり、それがだん/″\進歩《しんぽ》して柄《え》を差《さ》し込《こ》むところが出來《でき》たり、また短《みじか》い三角《さんかく》の劍《つるぎ》が長《なが》く平《ひら》たい劍《つるぎ》にと、進《すゝ》んで行《い》つたところがよくわかるでありませう。(第三十三圖《だいさんじゆうさんず》)
[#「第三十三圖 ヨーロツパ青銅器」のキャプション付きの図(fig18371_34.png)入る]
この青銅器《せいどうき》の時代《じだい》は、ヨーロッパばかりでなく、アジアにもありました。支那《しな》では周《しゆう》から漢《かん》の時代頃《じだいごろ》までは、青銅《せいどう》が重《おも》に使用《しよう》されたのでありますが、その青銅《せいどう》は支那人自分《しなじんじぶん》で發明《はつめい》したものか、また西方《せいほう》の國《くに》から傳《つた》はつたのであるかどうかは、まだ十分《じゆうぶん》に研究《けんきゆう》されてをりません。
ところが、人間《にんげん》が青銅《せいどう》を使《つか》つてゐる間《あひだ》に、鐵《てつ》の方《ほう》が銅《どう》よりも堅《かた》くて刃物《はもの》などにはつごうの好《よ》いことを知《し》つて來《き》たので、遂《つひ》に青銅《せいどう》に代《かは》つて鐵《てつ》が用《もち》ひられるようになりました。これから後《のち》を鐵器時代《てつきじだい》といふのでありますが、ヨーロッパでは鐵器時代《てつきじだい》の最《もつと》も古《ふる》い時代《じだい》をハルスタット時代《じだい》と稱《しよう》します。それはオウストリヤのハルスタットといふ所《ところ》の古墳《こふん》から掘《ほ》り出《だ》された鐵器《てつき》が、よくその特徴《とくちよう》を現《あらは》してゐたので、さういふ名《な》をつけたのであります。それから少《すこ》し後《のち》のヨーロッパの鐵器時代《てつきじだい》を、私共《わたしども》はラテーヌ時代《じだい》と呼《よ》んでゐますが、これはスヰスのある土地《とち》の名《な》でありまして、そこから掘《ほ》り出《だ》されたものが代表的《だいひようてき》のものとせられてゐるからであります。かのギリシアの文明《ぶんめい》も、鐵器時代《てつきじだい》のものでありまして、今《いま》から三千年程前《さんぜんねんほどまへ》に鐵《てつ》がギリシアにはひつて來《き》て、前《まへ》の青銅器時代《せいどうきじだい》の文明《ぶんめい》に代《かは》つて新《あたら》しく立派《りつぱ》な文明《ぶんめい》をつくり出《だ》したのであります。しかし鐵《てつ》が初《はじ》めて用《もち》ひられた頃《ころ》は、銅《どう》ばかり使《つか》つてゐた前《まへ》の時代《じだい》よりは必《かなら》ずしも文明《ぶんめい》が進《すゝ》んでゐたといふことは出來《でき》ません。前《まへ》に申《まを》しましたとほり、かの立派《りつぱ》なエヂプトの文明《ぶんめい》も
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