》されてあります。また當時《とうじ》の少女《しようじよ》はまだ生《い》きてゐて、そこからあまり遠《とほ》くない村《むら》に住《す》んでゐるといふことを番人《ばんにん》の女《をんな》から聞《き》きましたが、定《さだ》めしもう年《とし》よりのお婆《ばあ》さんになつて當時《とうじ》自分《じぶん》くらゐの娘《むすめ》の子《こ》の親《おや》となつてゐることであらうと思《おも》ひます。
アルタミラの洞穴《ほらあな》の繪《え》とごく似《に》てゐる繪《え》は、前《まへ》にいつたフランスのフオン・ド・ゴームの繪《え》であります。この洞穴《ほらあな》は、アルタミラとは違《ちが》つて、丈《たけ》の高《たか》い奧《おく》の深《ふか》い穴《あな》であつて、兩側《りようがは》の壁《かべ》にやはり多數《たすう》の動物《どうぶつ》の繪《え》を描《か》いてあります。こゝへも私《わたし》は行《ゆ》きましたが、繪《え》の出來《でき》は前《まへ》のものより、少《すこ》し劣《おと》るようでありますが、大體《だいたい》において同《おな》じ調子《ちようし》であります。その他《ほか》フランスの洞穴《ほらあな》には、これとよく似《に》た繪《え》や、少《すこ》し趣《おもむき》を異《こと》にする繪《え》が、無數《むすう》にありますが、一風《いつぷう》變《かは》つた描《か》き方《かた》で舊石器時代《きゆうせつきじだい》の繪《え》と認《みと》められるものは、東《ひがし》スペインの洞穴《ほらあな》などに遺《のこ》つてゐる繪《え》であります。みな妙《みよう》な恰好《かつこう》をした人間《にんげん》の繪《え》で、それは今日《こんにち》南《みなみ》アフリカの土人《どじん》ブッシュマンなどが描《か》く繪《え》と非常《ひじよう》に似《に》てゐるのです。
さて私《わたし》たちは次《つ》ぎの室《しつ》にはひる前《まへ》に、ちょっと見落《みおと》した石器類《せつきるい》を一應《いちおう》見《み》ることにいたしませう。そこにあるのは舊石器時代《きゆうせつきじだい》の最後《さいご》の頃《ころ》であるオリニヤック期《き》のもので、その次《つ》ぎに來《く》るのが、舊石器時代《きゆうせつきじだい》から新石器時代《しんせつきじだい》に移《うつ》つて行《ゆ》く中間《ちゆうかん》のアジール期《き》のものです。石器《せつき》の造《つく》り方《かた》などは
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