つた龍ノ口の海岸にある、溶岩流下の遺物を見に行くことにした。とある茶店で道を尋ねると、出て來たお婆さんが、今教へてあげるが、盥に水を取つてあげるから、行水をあびて行けとの親切――それ故これは夏休みのことゝ思ふ――さてお婆さんの子供か孫かの人に案内せられて、崖の下の溶岩の下を棒切れで一寸ホジクると、思ひがけなく赤くなつた土器片と共に、黒曜石雁股の大きな石鏃が一つ轉げ出た。その時の嬉しさは今も忘れることは出來ない。これも今大學にある。此の大島のと權現臺のとが、石器時代地名表の第三版の裏に、其頃寫生した圖がのつて居たから此處に掲げる。
[#「石鏃二つ」の図(fig42154_01.png)が入る]

          四

 石器のいろ/\とある中にも、石鏃ほど可愛らしくキレいなものはない。私は今でも時々石器採集に出かけ、ゾク/\と出て來る石鏃を拾ふ夢を見ることがある。これは夢のうちでも一番嬉しい夢である。七八年前佐賀縣のある遺跡へ行つて畠の中を探したら、二三十分間のうちに黒曜石の石鏃三四本を拾つたのも嬉しかつた記憶の一つであるが、それよりも不思議なことは、三四年前數人の學生を引率して大和
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