たのは、それでも豫定より一時間も遲れた午後四時過ぎであつた。
 早速區長さんに案内されて、街道の裏の神山の廣場に登ると、其の道筋さへ新に手入れがしてあり、廣場の附近には多勢の見物人が集つて、宛ら御祭りのやうである。半圓形にしつらへた席には、既に見物の人が坐り込んで、私の來るのを今か/\と待つて居られ、盛裝した踊り子の婦人老若四五十名は、用意全く終つてシビレを切らして居られる有樣に、私は今迄自分一個の爲めに斯くばかりの催しを受けたことがなく、たゞ/\恐縮と感謝との念に心一ぱいになつたのである。
 やがて臼太鼓《うすでーこ》の踊が始まつた。歌舞のことに就いて一向知識のない私には、善くも分らないが、四十人ばかりの婦人が二つの大きな輪を作り、外の方は年の取つた人々で、其の一端には、最も年上の五十位のお婆さん連が八人、紫や紅の布を頭に卷き太鼓を持ち、他の人々は皆な四つ竹や扇子、拂子樣のものを手にしてゐる。内の方の輪は年の若い娘さんで、紫や水色の長い布を髮から垂れてゐる。先頭の人が音頭を取ると、一同歌をうたひ足取りをするのであるが、其の進みは非常に遲く、ピツチは甚だ緩かに動作は變化に乏しいのが、即
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