代劇も中々面白く、見物をして涙を催さしめる場面もあつた。殊に組踊りは男優にして、斯くも女らしく優しく舞へるものかと驚かされた。愈々『阿摩和利』劇となる。これは大體内地の舊劇の仕組であるが、琉球中世の梟雄|阿摩和利《あまわり》を主人公とし、之に配するに其の美しい妻|百十踏揚《もゝとふみあがり》姫などを以てし、變化ある幾多の場面は、今日はじめて島袋福原兩君から此の史劇の荒筋を聞かされた私にさへ、非常な興味を感ぜしめたのであるから、郷土の人には如何に大きな感動を與へたことであらうか想像に餘りある。琉球語の能く分からぬ位は、西洋で言葉の一向分からぬ芝居を屡々見たことのある私には何でもない。却つて若干解し得る言葉が出て來るのが非常に嬉しかつた。夜は更けても劇は中々終らない。併し私は明日早く那覇を立つて、今舞臺で見つゝある阿摩和利の居城|勝連《かつれん》を遠望し、その敵手であつた忠臣|護佐丸《ごさまる》の中城《なかぐすく》をも訪ねんとするのである。餘り遲くなつてはと、兩君よりも一足先きに宿に歸つたのは十一時頃であつた。

          一三 普天間から荻堂貝塚

 第四日目はいよ/\那覇を出
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