》きの草履をしまいこんだ。
「じいや、おはる」
行雄が靴ぬぎで怒鳴《どな》った。と障子のあく音がし、同時にいない筈の作衛がおはるといっしょに出て来た。瞬間、私は何とも云えぬ不愉快な気持になった。あの夜、抱いた感じよりも一層その嫌悪感が増していた。はげしい憤りをも感じた。何故だろうか、作衛はお使いが早く済んで家に帰っていた。ただこれだけの事なのに。でも私は私の気持を詮索する余裕さえなかった。二人が関係していると気附いたから憤ったのだろうか、いやそんなことはもう前々からもしやと思っていたから今さら驚くことはない。が私は二人が同時に顔を出したのに、何か強い反撥を感じたのだ。作衛のいう使いの報告も碌にきかないで一言も云わずに食事をすませた。二人とも何かそわそわしてて口もきかず――いや殊に私の目からそう見えたのかも知れないが、――行雄一人が今日行った知人のところでの御菓子がおいしかったとそればかり云っていた。私は創作もしないで寝床をひくとすぐ横になった。電気を消すとすぐ、傍の行雄は疲れたせいか、すやすやと寝息をたてており、そのかわいい手は私の床の方へと無意識にさしのばしていた。私はそれを見ると
前へ
次へ
全21ページ中8ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
久坂 葉子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング