っぱり悪い。私はなんとなく因縁付きのこの姐に、いい気持がしなかったけれど、とにかくよくはたらき、悪いこともしないので雇っているわけだった。やがておやすみを云い交す声がきこえ、作衛の、寝床へ入ると必ず一度するあくびとものびともつかぬのがきこえた。私もまもなく、絵筆を片附けて行雄の隣りに横になった。
そんなことがあってから、私は二人に注意を払うようになった。注意というより、それは意地の悪い眼を光らせるという方があたってたかもしれない。でもその意地悪さの中には、おはるをおもってやる責任感もあったろう。おはるはまだ若い。これから嫁入りせにゃならない。おはるの一身上にうるさいことがおきたとき、私はやはり責任があるのだ。だが若い私が、「お嬢様、お嬢様」と云ってくれていた作衛に注意を与えたり説教したりする事は、ちょっと出来かねた。そしてそのままで春になったのだった。
ある夕方、私は近々個展をひらこうと思って、そのため方々へ頼み事などしに行き、七時頃、行雄をつれてぶらぶら家へ戻った。玄関をあけても誰も出て来ない。作衛は使いにやっているからいない筈だが、おはるは居るのにと思いながら私は他所行《よそゆ
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