知ったのである。私は作衛に今度は同情される立場だった。私は夫との生活を思い起し感傷に満ちた日を送った。そしてそのあわれな気持、孤独のかなしさを、創作してゆくものにはき出しながら、何んとかかんとか来たのだった。昔、やすく仕入れていた絵ざらさの材料や木綿布が役立って、始めはほそぼそと友達などに頼み、注文をとっていたが、それがだんだんひろまり大きくなったのであった。そして忙しさが増す、私ひとりじゃきりまわされない、で、若い姐をやとったのが、それがまたおはるという少しびっこの娘だった。右の眼は全くみえず不器量な娘だったけれど、口ばかりはいやに達者でつっぱねたものの云い方が妙に魅力でもあった。この姐が今まで作衛の寐起きしていた玄関脇の三畳に入り、作衛は台所横の食事をするところに寝ることとなった。私達母子は夫の写真をかざっている仏間と製作室と寝室をかねた六畳で一日の大かたを送った。そうしているうちに作衛がおはるをかわいがるのが目にたつようになって来た。風呂たきや使走りの他に、おはるの仕事である掃除や洗濯を手伝ったり、朝もはやくから起きて、ごはんのたきつけ、おはる個人の用事までやっているようだった。
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