など厄介な仕事をいちいちひとりでするには追っつかないほど注文が来、戦前ならばこんな事専門の職人がいたけれども今はそんな伝手さえなく、去年の暮、私はまた新しく若い姐をやとったのだった。
図案の反古をやきながら、わたしは現実にたちかえった。そしてこの頃の生活のさびしいうちにどこか創作のたのしさを見出して来たのに、ついまた最近、めんどうなことが起り、それに頭をなやまさねばならない事を思い出した。それは作衛と若い姐のことである。
話はまたむかしに戻るが、作衛は、おはるという妻をもっていた。夫婦して私の幼い頃からずっと面倒をみてくれたのだった。そうして結婚した後も私のために、わずかな月給でもいいから働かせてほしいと云い、軽井沢の別荘番に置いていたのだった。おはるは色が白く、ぽっちゃりとしたひとであったが、長い間、関節炎という脚の病に苦しみ、歩く事も出来ぬ不自由な身だった。作衛はおはるをしんからかわいがっていて、一生懸命、看護につとめていた。厠へ行くにも肩をかし、食事の支度から風呂の世話まで、まるで女房と亭主とさかさまのような状態だったけれども、おはるのため、作衛はいやな顔一つしなかった。おは
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