来たんですわ、私の留守の間に来て主人に何かつげ口したのですわ、ええ、そうです」
私はあれから一週間、作衛の動向に、うんと注意していた。そして遠方へは行かさなかった筈である。歩いて行けるところの使いばかりで、作衛も私が見積った時間には、ちゃんと帰って来ていた。でもとにかく、私に責任があることだ。で、
「おまえ、どうする気なの……」
と問うた。おはるの母という人に対して済まないとその時、あの割に品のよい面影を思い浮べた。
「致し方ございません。私はこれからも先、どこぞへ女中にまいります。ですがまた、作衛じいさんが来るかも知れません。神戸ですと会うかも知れません。私は郷里へは、こんな姿では帰れません、ですから作衛じいさんに何処かへ行ってほしいのです。そうすれば私、又ここへ御厄介になってもよろしいです」
私は、おはるの勝手な云い分に、多少呆れたものの仕方なく承知した。で附け加えて、「うちへは来てもらわなくともよいから早くどこかへ務めなさい」とぶっきら棒に云った。作衛は行雄を連れて、裏山へ薪をひろいに行かせていた。帰らないうちにと、私はおはるをせきたてた。おはるは、ケロッとして、さっさと帰
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