一しょの屋根の下では反抗出来なかったのだといい、作衛は作衛でおはるが自分に甘えて来たんだといい、二人の云い分はどちらも矛盾しているようであり、きりがつかなかった。私はやっとのことで二人を黙らせ、おはるも悪かったけれど一旦もう嫁いだからには作衛が手をひくべきだ、とそれが私自身の真実の結論ではなくても、一番いい道だと思ってそう云った。とにかくおはるに肩をもって、私が作衛の今後を責任持つから、とりあえず帰れと云った。おはるが帰った後私はさんざん作衛を叱った。自分自身何を云っているのかわからぬくらいカッとしていた。作衛は、わめきながら泣いた。そしておはるを罵り、私をさえも不人情だと罵った。
それから一週間、それが今日である。図案の反古を焼いてしまうとあらためて掃除をし、灰を土の中に埋めた。とその時、木戸のあく音がして庭に入って来たのは、おはる。何となくしおれている様子。
「おまえどうしたの一体」
挨拶もなく私はいきなりきいた。おはるは涙を一ぱい溜めている。
「奥様、私離縁……」
「えっ、離縁……」
私は瞬間はっとたちすくんだ。あの時、私が責任持ちますと云ったのだ。
「奥様、作衛じいさんが
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