て前へならえをする時、私のところでいつもゆがんだ。まっすぐに並ぶことがどうしても厭なのである。たやすいことに違いないのだが、私は、先生になおされるまできちんと並ぶことをしなかった。教場では他所見をする。御遊戯は型にはまった廻転や歩みばかりで面白くない。御行儀が悪いとしかられる。そんなことが続いて私はすっかり疲れてしまったのである。私はそこで嘘をつけばいいのだということを思い出した。
「センセ、オテテガイタイノ」
 私は手を揚げるべき時にそう云った。先生は私の云い分をすぐに通してくれた。とにかく、私は名門の子供であり、学校の名誉でもあったのであろう。
 家へかえると勉強などしないで、絵本をみたり、相変らずお話をつくってきかせたりした。御稽古ごとはどんどん進んだ。然し、私はやはり型にはまった形をつくることをいやがりだした。私はレコードをかけて勝手に振つけをしたり、でたらめなメロディをつくってピアノの練習曲はおさらいしなかった。しかし、その我儘な振舞がかえってよかったのである。大人達は、私を天才的だと云った。私は、ますます調子にのって来た。そうして二年生に昇った頃、私は、恐しいことをするよう
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