黄や赤のごてごてにぬられた表紙絵の大衆雑誌の小説と同じような情景が私の傍で、しかも私もふくみこんで行われようとした。私は抵抗した。朱塗の机はがたがたと隅の方へ押しやられていた。
「分家さん、はなして、はなしてよ」
私は小声でそう云った。木綿の洋服の脇のスナップが音をたててはずれた。
「いやらしいひと、やめて」
私は精一ぱいの力を出して彼の腕をつかみ彼の上体を押しのけた。そんなことが二三度くりかえされた。急に彼はおじけたように部屋の隅にあおむけにころがった。
「ふん、大岡とやりおったくせに、ちゃんと知っとるぞ」
私はいきなりむらむらと怒りがこみあげた。
「分家さん、冗談にもそんなこと、いやな」
気弱になった彼に私はがみがみと云った。
「ふん」
彼は例の口許から例の発音をした。
「分家さん、さ、かえりましょう。みっともない。まだうすあかるいしするのに。それに、ええ奥さんがおってやないの」
私は、彼を精神的変質者であろうと、もともと思っていた。私は彼の手をひっぱって起した。彼は私のするままにしていた。私は、ワイシャツの釦をかけ、ネクタイを結びなおしてあげた。彼の奥さんは気性の勝っ
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