だということを証明する何ももっちゃいません。感じ合うことが出来なければおしまいです。私は、彼と共に生活はしてゆけまいと思いました。疑いや誤解の連続になるでしょうし。小母様、小母様は、孤独になって生きてごらんなさい、とおっしゃいましたね。私には出来ないのです。来年早々、家を出て、生活してゆくつもりでしたが、想像していた私のその生活には、たった一人ではなく、鉄路のほとりの存在があったのです。そして仕事が出来るだろうと思っていたのです。家庭のこと。仕事のこと。そして一番大きなことは、鉄路のほとりのことなのです。彼を失って、私は仕事をしてゆくだけの勇気も強い意志もありません。小母様。私は強がりにみえて、本当はとっても弱いのね。私は、彼を責める気はありません。自分を責める気はうんとあっても。どうしてこんなことになったのか。やっぱり私の罪だと思うのです。そうだ。その手紙、私は速達にしたためた。あげたいものは、平手打ちです。私の愛情の表現です。もう何も云うことも出来ない。彼の抱擁と接吻も期待出来ないのです。
 私は思う存分、彼の頬を打つつもり。それから、返したいものは、彼がくれた二枚の写真のうち一枚
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