の方です。それには、彼の昔の恋人が一しょにうつっているのです。はじめのうちに、ちょっとそのことを書いた筈です。私は、写真をみてさえ、むらむらするのですから。
小母様。その翌日、つまり二十八日、小母様のところへ行く前に、青いポスト、速達便の箱にいれたのです。彼への最後の手紙を。
小母様。その後のことは、もうかかなくてもいいわね。
小母様。今、一時頃かしら。三十日のよ。いや、三十一日の午前一時。
小母様、彼からは何の連絡もなかったのです。十時迄に、いやその後、今迄に。もうおしまい。はっきりおしまい。私は、何も行動する勇気なくなりました。だけど死のうとする心の働きはあるんです。今、行動をともなわせるべく努力しているのです。私はだけどどうやったらいいんでしょう。南の国が好きなのに。寒い雪のふるところへ行こうとする私。私は、いつ死ぬでしょう。行動をとることが出来るのでしょう。もう彼とのことは終ったのだと結論が出ているのに、私の心では、終らせたくないという働きかけがあるのです。電報か電話が若しや少しおそくなっても来やしないかと。或いは、仕事の都合で私の郵便を見ていないのではないかと。だけど
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