私すっかり、嫌いになったことがあります。それは、作曲家のT氏夫妻とのんでその後トーアロードで、知らぬ婦人にいたずらしたことです。大へんな侮辱を加えたんです。私は女だから、とてもそれを平気でみては居れませんでした。揚句の果、私のきらいな職業の巡査さんに、説教されたりして、いくら飲んでるからって、とてもその行為はゆるせなかったのです。その夜、泣きたいような気持でした。そして、やっぱり、私は過去の人を愛してるだろうと思ったりしたんです。だけどその後会う度に、そして手紙をもらう度に、私は自分の感情をおさえることが出来なくなりました。すっかりもう、その人のことが、心の大部分を占めはじめたのです。京都での夜、抱擁と接吻をうけて、私は、とても嬉しかったのです。過去の人を忘れてしまえと思いました。忘れられそうだった。単純よ。私は。
小母さん、だけど、私は、駄目。一週間おいて、過去の人に会った。駅で小一時間、待った。もう冷くしよう。彼には、通り一ぺんの挨拶でわかれてしまえと思った。私は、だけど何てひどい女でしょう。あの夜程、自己嫌悪にみちたことはありません。私は、彼とのみながら、お喋りしながら、又、自
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