さげすめと号令しながら、だんだん、愛情を自分でみとめてしまうようになっちまった。小母さん、私はその夜、京都へ行って、別の人の、愛撫をうけたんです。彼のことを少しのべます。今、私がとても愛している人なんだ。病気で寝ている時、れもんをもって幾度か見舞に来てくれているうちに、私は愛というより、ほのぼのとした、わけのわからない感情を持ちはじめたのです。過去の人とは、まるでちがう性格だし、風貌だし、動きでした。だから、私は、過去の人とのやぶれた夢を彼に再現させようとしたのです。最初は勿論、インタレストだったかも知れません。でも、ものすごくひかれはじめました。彼の中には、清浄さだとか、純粋さは、見出せません。生活に淀んでいるみたい。おかしな表現かもしれませんが、谷川ではなしに、もう海に近い、そして船の油や、流れて来た、汚いものが浮んでいる川の中に、どこへでも行け、といった気儘気随でいる流れ木のような感じの人なんです。私は、会う度に、どんどんひっぱられてゆきました。彼も、私に、最初、興味とか、いたずら気しかもたなかったでしょうが、とても愛してくれました。十月頃だったか、いえ、九月の末頃かしら、一度、
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