は、けれど、やがて、今日家へ戻る自分を、ほんとに情けない気持で想像したのです。私は、帰りたくないと申しました。でも、鉄路のほとりは、私に帰るようにと云いました。十時半前、大阪駅に戻りました。汽車には、まだ間に合うのです。でも私は、黒部へ行こうとは勿諭思いませんでした。私は鉄路のほとりと別れて、神戸へむかいました。そして知合いに出あい、彼にさそわれて、焼鳥屋へのみに行ったりして、帰ったのです。小母様。だけど一歩家の中へはいった私は、又、重い石を頭にのっけられたような、いやな気持になったのです。淀んだ川瀬から、救い出してほしい。誰か救い出してほしい。私は疲れ切っていました。小母様、鉄路のほとりに、私の今の立場を救い出してほしいとは云いかねるのです。彼は生活がゆたかではありませんし、今のようなお互いの気持に、現実的な問題をどうして取上げられましょうか。その夜も、兄のことで、父母は何かぽそぽそ云ってましたし、私はすぐに寐床へはいり、とても、苦しい気持になったのです。一刻も早く。私は、重石をとりのぞかせるような状態まで、自分を持ってゆきたいと。私はその夜あれこれと随分考えました。彼とのこと。それ
前へ 次へ
全64ページ中44ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
久坂 葉子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング