るわけよ」
蓬莱建介は、南原杉子のつくりごとであると見抜いた。仁科六郎は、みえない世界を、自分達のものだと信じた。ふと、南原杉子と視線があった時に、疲女はうなずいたのだ。
「まあ、お気の毒ね、ごめんなさい、私、いやな思いをおさせしたみたいだわ」
仁科たか子は心から云った。
「いいえ、私、幸せよ」
南原杉子は笑った。然し、阿難が泣きはじめた。
「お杉は案外ね」
蓬莱和子は、わけがわからなかった。然しそれを口にだして疑問の言葉にすることは出来なかった。仁科たか子が居る。
「さあ、とにかく、もっとのまなけりゃ」
蓬莱建介が云った。南原杉子は、元気よくグラスをつき出した。
――南原杉子。私と、蓬莱建介と蓬莱和子の三角の線。私と仁科六郎と蓬莱和子の三角の線。私と、仁科六郎と蓬莱建介の三角の線。私は、重なりあった三つの三角の線を断ち切って。仁科六郎と阿難の線だけを存続させようとしたのだわ。だけど、あらたに、三角の線が出来てしまった。仁科たか子があらわれたのだから――
――阿難は絶望――
――いいえ、仁科六郎の愛を信じなさい――
仁科夫妻はむつまじかった。それだけで、仁科六郎と阿難
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