しくなるわね」
「あらいやだ。ママさんは、御若いのだと、御自分で思ってらっしゃる筈よ」
 それは、鋭い南原杉子の言である。
「どうして、あなたよりずっと年寄りよ」
「年齢で若さは決められないわよ」
「じゃあ何」
「だって、人間の精神があるものね。五十でも六十でも若い人居てよ。精神的な若さに、肉体が伴わない場合、しばしば女の悲劇が起るのよ。ママさんはとにかく御若い筈よ」
 仁科たか子は、肉体という言葉を平気で口にする女性にびっくりした。
「若くみられて幸せじゃないか」
 蓬莱建介が言葉をはさむ。
「本当はおばあさんなのにね」
 蓬莱和子は、ひどく夫建介と、南原杉子から軽蔑をうけたような気がした。
 仁科六郎は飲んでばかりいた。喋ることがとても出来ないのであった。阿難がまぶしい存在に思われた。何か、遠いところにある女性のように思われた。そして傍にやさしくうつむき加減でいる妻たか子の方が、安心して接近出来る人に感じた。
「南原さんは御結婚なさいませんの」
 仁科たか子は、こんなことを云ってわるいのかしらと思ったが、酔い心地で、南原杉子に恍惚としながら、おずおず云ってしまった。
「お杉は、結婚
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