ある。南原杉子は、さかんにのんだ。けれど、はっきり南原杉子を意識していた。仁科たか子は味わったことのない空気に酔いだした。そして、仁科六郎を世界一よい夫君だと信じた。蓬莱建介は、無事に終りそうなのでほっとしていた。彼は、南原杉子に、関係をつづけてくれと頼もうかと思った。それ程、彼女は美しかったのだ。蓬莱和子は、いらいらしはじめた。そして、しきりに、真珠の首飾りをいじった。
 ――本当に、浮気をしたなら、浮気をしましたなど云えないわ。夫と、お杉は何かあったのじゃないかしら。でも、彼女は、仁科六郎を愛している筈。いや、愛しているとみせかけて、夫と何かあるのをかくしているのかしら――
 蓬莱和子は、仁科六郎と、夫建介とを見比べた。蓬莱建介の方が立派である。彼女は、喜びと不安と、どっちつかずの気持であった。
「六ちゃん。いやに黙っているのね。奥様とおのろけになってもいいことよ」
 仁科たか子は、はずかしそうに、しかし嬉しそうにうつむいた。彼女は、善良な女性である。
「お前ときたら、のろけるのは人前だと考えているのかね」
 蓬莱建介は笑いながら云う。
「ねえ、あなた。でもお若い御夫婦をみてると羨
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