仁科たか子は夫に小声でささやいた。
「あら、御存知なかったわね。南原杉子さんって、とてもきれいないい方よ。あなた、屹度好きになれるわ」
たか子の質問を耳にはさんだ蓬莱和子は、愉快そうにこたえた。
「放送の仕事している人だ」
仁科六郎は、たか子に云った。
――夫がまるで関心のない人なんだわ、そして、蓬莱和子にだって、夫は別にとりたてて好意をもってないわ。美人だけど、もう年輩の方だし、御夫婦は仲よさそうだもの――
たか子は、夫六郎の方に笑顔をおくった。
四人はビールの乾杯をした。
「ねえ、あなた、こんなおまねき本当にうれしいですわ」
「じゃあ、これから度々しましょうね、今度はうちの方へ御まねきするわ」
蓬莱和子はふたたび口をはさんだ。
「南原女史、何してるんだ。シャンパンがぬけないじゃないか」
蓬莱建介はわざと又大声で云った。然し、彼は、南原杉子が来ない方がいいように思っていた。
――彼女のことだから、二組の夫婦の前にあらわれても平気だろう。僕と最初の出会いからして芝居げたっぷりなんだから。でも、四人だけでも仲々厄介な関係になっているのだから、そこへ又、もっと厄介な関係の
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