て、ただちに、南原杉子のオフィスへむかった。だが、オフィスの前まで行った彼女は、南原杉子を訪ねることが、非常に屈辱的な行為であると感じた時、さっさとカレワラへ戻った。
――お杉に侮辱される位なら、夫に屈従する方がましだ――
彼女は、今夜、建介に南原杉子のことを、たずねてみようと決心した。
ところが、カレワラのドアをあけた時、中から晴れやかな声がした。
「ごぶさた、ごめんなさい」
南原杉子である。
「あらまあ、御久しぶり、どうなさってらしたの」
言葉は、相変らずの真実性をおびているが、その表情には、もはやかくしきれない敵意識があった。
「何だかばたばたしちゃってて。二週間以上になるわね。ごめんなさい」
「心配したわよ」
蓬莱和子は、南原杉子に自分のうろたえをみぬかれないかと案じた。そして、強いて快活に、
「うちの旦那様がね。あなたにとってもまいっちゃったらしいの」
「あら、御冗談、御主人にいつだったか、散々あなたのこと、のろけられちゃったわ」
南原杉子、蓬莱建介が、妻にかくしていることを知っていた。蓬莱和子は、年下のものから、からかわれている気がして腹立しかった。
「六ちゃ
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