ちゃんの思いに対して冷酷なんでしょう」
「人間の思うことはつまらんね。することもだよ」
「うそおっしゃい。あなたはまるで傍観者みたいにおっしゃるけど、奥様大もてだから、やっぱり内心は心配なんでしょう。美しいものは、そっとしまいこんでおきたい筈だもの」
「ふふ。君は、妻君の浮気の相手を何人知っているわけ」
「奥様浮気なんかなさらないわ。浮気をなさったら私、かなしいわ。私、奥様好きですもの」
「君は変態かい?」
「そうかもしれないわ。あなたが浮気なさったら、奥様のためになげくわよ。でも、ともかく奥様は、大もてね」
「それで僕が幸せってことになるのかね」
「誇よ」
「まあいいさ、どっちにしろ。ところで君と僕が浮気をしたらどういうことになる?」
「奥様はあなたが浮気しないものと思ってらっしゃるわよ。やっぱりあなたがお好きで、しかも、あなたに愛されているって御自信がおありですわ」
「まってくれよ。俺はそうすると、ひどく妻君に侮辱されてるようだぜ」
「何故」
「浮気しないなんか僕を人間並にしてないじゃないか。自分だけはさっさと浮気してさ」
「ほらほらやっぱりあなたは傍観者じゃないわ。あなたの最愛の
前へ 次へ
全94ページ中44ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
久坂 葉子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング