みせ、らせん階段を降りた。パートナーは笑っていた。二人は椅子に腰かけ煙草に火をつけた。
「やっぱり南原さんですか、びっくりしました」
蓬莱建介はダンサーをつれて赤羽夫人に近づいた。パートナーは驚いた。
青い螢光燈がお互の顔を青白くみせる。南原杉子と蓬莱建介である。
「ママ、もう一本ぬいてくれよ」
白い泡をふいたビールびん。赤羽夫人は衣裳がえしてすっかり南原杉子になっている。
「あなたと御話したかったから、あんな芝居しちゃったの」
「でも上手いもんだね」
南原杉子は、南原杉子でないかも知れぬ。あたらしくコケットリーな女になっている。
「あなた、美しい奥様で、世界一幸せな旦那様よ」
「どうだかね」
「あなたなんか、浮気心もおきないでしょうね」
「御推察にまかせるね」
「じゃあ、今日の彼女にうらまれたかしら。御約束あったんじゃない?」
「僕は約束がきらいでね」
「あら、私もよ」
「ところで君にやいてるぜ、妻君が」
「あらどうして」
「六ちゃんだ」
「おやおかしい。わたくしが嫉いてるのに」
「じゃ、六ちゃんはどっちが邪魔なんだ?」
「そりゃわたくし。それからあなたもよ。でも、奥様、六
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