、屹度、いらいらさせるばかりよ」
「経験もないのに」
「自分の性格で推測することは出来る筈」
「じゃ恋愛は」
「します。でも結婚しません」
「恋愛には自信があるのですか」
「あなたは理攻めね。恋をすれば、その日から、自信なんてありませんわ。生きてゆくこと。仕事には自信あってもね。恋をすれば盲目的になります」
「あなたが? 本当ですか」
「本当よ」
南原杉子は、本当よと云いながらおかしな気がした。彼女は、自分を盲目的な女にならせることが出来るのだから、本当に盲目的になりきるわけではない。そのことに気付いたのだ。
「あなたは恋愛結婚なさったの」
「いや、見合い、一回の」
「何年になるの」
「四年」
「お子さんあるの」
「まだ。ほしいですよ」
ふと、南原杉子は笑いを洩した。仁科六郎の視線に気付いて、
「いえね、あなたの恋愛はどんなのかと想像したの、可能性の限界を究めた上での恋でしょう。一プラス一は二になるのでしょうね」
「みぬきましたね。確かに一プラス一は二にしなきゃすまされない男です。すべてにおいて」
「詩人じゃないわね。やっぱり放送屋ね」
「あなたはどうです」
「私。自分の行動に計算
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