って献上しようと思った。成に子供があって九歳になっていた。父親のいないのを見て、そっと盆をのけた。虫はぴょんぴょんと飛びだした。子供は驚いて捉《とら》えようとしたが迅《はや》くて捉えられない。あわてて掌《てのひら》で叩《たた》きつけたので、もう股《あし》が折れ腹が裂けて、しばらくして死んでしまった。子供は懼れて啼きながら母親にいった。母親はそれを聞くと顔の色を変えて驚き、
「いたずらばかりするから、とうとうこんなことになったのだ。お父さんが帰って来たら、ひどい目に逢《あ》わされるのだよ。」
と言って帰った。子供は泣きながら出ていった。
間もなく成が帰って来た。成は細君の話を聞いて、雪水を体にかけられたように顫《ふる》えあがった。それと共に悪戯《いたずら》をした我が子に対する怒りが燃えあがった。成は子供をひどい目に逢わそうと思ってたずねたが、子供はどこへいったのかいった所が解《わか》らなかった。
そのうちに子供の尸《しがい》を井戸の中に見つけた。そこで怒りは悲みとなって大声を出して泣き叫んだ。夫婦はその悲みのために物も食わないで向きあって坐って、すがるものもないような気持ちであった
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