いかと思って、耳を傾けながらそろそろといった。それはちょうど針か芥《からしな》の実をたずねるようであった。そして一生懸命になって捜したが、どうしても見つからなかった。それでもやめずにあてもなく捜していると、一疋のいぼ蟇《がま》が不意に飛びだした。成はそれが画に合っているのでますます愕《おどろ》いて、急いで追っかけた。蟇は草の中へ入っていった。成は草をわけて追っていった。一疋の促織がいばらの根の下にかくれているのが見えた。成はいきなりそれを捉えようとした。虫は石の穴の中へ入った。成は尖《と》んがった草をむしってつッついたが出なかった。そこで竹筒《たけづつ》の水をつぎこんだので、虫はやっと出て来たが、その状《すがた》がひどくすばしこくて強そうであった。成はやっとそれを捉えて精しく見た。それは大きな尾の長い、項《うなじ》の青い、金色の翅《はね》をした虫であった。成は大喜びで篭へ入れて帰った。
 成の一家は喜びにひたされた。それは大きな連城《れんじょう》の璧《たま》を得た喜びにもまさっていた。そこで盆の上に伏《ふ》せて飼い、粟や米を餌《えさ》にして、手おちのないように世話をし、期限の来るのを待
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