持っていて、これと寸分違わない物を持っている者があるなら女《むすめ》を嫁にやろうといった。柳はそれを人から聴いて不思議に思って、彼の界方を持っていった。
老婆は喜んで面会した。そして女を呼んで見せた。それは十五、六の綺麗《きれい》な女であった。女は一度お辞儀をするかと思うともう幃《まく》の中へ入っていった。柳の魂は揺れ動いた。
「私が持っている物と、こちらの物と似ておりましょうか。」
そこで双方が界方を出しあって較べた。その長さも色合もすこしも違わないものであった。老婆は喜んで柳の住所を問い、女を後から伴《つ》れてゆくから、輿《くるま》に乗って早く帰って仕度をしておけ、そして界方を印に遺しておけといった。柳は界方を遺《のこ》しておくのが不安であるからすぐ承知しなかった。老婆は笑った。
「旦那《だんな》もあまり心が小さいじゃありませんか。私がどうして一つの界方位とって逃げるものですか。」
柳はしかたなしに界方を置いて帰っていったが、どうも不安でたまらないから、輿を傭《やと》って急いで老婆の家へ取りにいった。老婆の家は空《から》になってだれもいなかった。柳は駭《おどろ》いて、その附近
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