も年をとったし。」
小翠ははげしい言葉でそれを断った。夫人はそこで田舎の荒れた寂しい亭園に二人でいるのは不便だろうと思って、多くの奴婢をつけておこうとした。女はいった。
「私はそんなたくさんな人の顔を見るのはいやです。ただ前の二人の婢と、外に年とった下男を一人、門番によこしてくださいまし。その外には一人も必要がありません。」
夫人は小翠のいうなりになって、元豊に頼んでその亭園の中で静養さすことにし、毎日食物を送ってよこした。
小翠はいつも元豊に、別に結婚せよと勧めたが、元豊は承知しなかった。
一年あまりして小翠の容貌や音声がだんだん変って来た。元豊はいつか画《か》かした小翠の像を出して見くらべた。が、別の人のようであるからひどく怪しんだ。女はいった。
「私は今と昔とどうなっているのです。」
元豊はいった。
「今も美しいことは美しいが、昔に較べると及ばないようだな。」
小翠はいった。
「それは私が年とったからでしょう。」
元豊はいった。
「二十歳あまりで、どうして急に年をとるものかね。」
小翠は笑ってその画を焚《や》いた。元豊はそれを焚かすまいとしたが、もうあらあらと燃え
前へ
次へ
全19ページ中17ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
蒲 松齢 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング