った。
「小翠、小翠。」
翠の着物の女はいってしまった。いく時紅い着物の女にいった。
「暫く喧嘩するのを待とうね。お前の男が来たのだから。」
紅い着物の女がもう来た。思ったとおりそれは小翠であった。元豊はうれしくてたまらなかった。小翠を垣の上にのぼらして、手をかしておりてこさした。小翠はいった。
「二年お目にかからないうちに、ひどくお痩せになりましたね。」
元豊は小翠の手を握って泣いた。そして思いつめていたということをいった。小翠はいった。
「私もよくそれを知っていたのですが、ただお宅へは帰れないものですから、今、姉と遊んでましたが、またこうしてお目にかかるのも、因縁ですね。」
元豊は小翠を伴《つ》れて帰ろうとしたが、小翠はきかなかった。それではこの亭園にいてくれというと承知した。そこで従者をやって夫人に知らした。夫人は驚いて轎《かご》に乗ってゆき、鑰《かぎ》を啓《あ》けて亭に入った。小翠は趨《はし》っていって迎えた。夫人は小翠の手を捉《と》って涙を流し、力《つと》めて前の過《あやまち》を謝した。
「もし、前のことを気にかけないでいてくれるなら、一緒に帰っておくれでないかね。私
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