して、夜も昼もそれに祷《いの》っていた。
幾《ほと》んど二年位してのことであった。元豊は故《わけ》があって他村へいって夜になって帰っていた。円い明るい月が出ていた。村の外《はずれ》に王の家の亭園があった。元豊は馬でその牆《へい》の外を通っていたが、中から笑い声が聞えるので、馬を停《とど》め、従者に鞍《くら》をしっかり捉えさしてその上にあがって見た。そこには二人の女郎《むすめ》が戯れていた。ちょうどその時月に雲がかかったので、どんな者とも見わけることができなかった。ただ一方の翠《みどり》の着物を着た女のいう声が聞えた。
「お前をここから逐《お》いだすわよ。」
すると一方の紅《あか》い着物を着た女がいった。
「あなたは、私の家の庭にいながら、だれを逐いだすというのです。」
翠の着物の女はいった。
「お前はお嫁になることもできないで、おんだされたのを羞《は》じないの。まだ人の家の財産を自分の所有《もの》にしているつもりなの。」
紅い着物の女はいった。
「姉さんは、ひとりぼっちでいる者に勝とうとしているのですね。」
その紅い着物の女の声を聴くとひどく小翠に似ているので、急いで大声でい
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