って飛びかかった。王成の鶉は王の鶉が来ると、鶏の怒ったようなふうで身を伏《ふ》せて待った。王の鶉が強い喙でつッかかって来ると、王成の鶉は鶴の翔《かけ》るようなふうでそれを撃った。進んだり退いたり飛びあがったり飛びおりたり、ものの一時も闘っていたが、王の鶉の方がようやく懈《つか》れて来た。そして、その怒りはますます烈《はげ》しくなり、その闘いもますます急になったが、間もなく雪のような毛がばらばらに落ちて、翅《はね》を垂れて逃げていった。見物していたたくさんの人達は王成の鶉をほめて羨まない者はなかった。
王はそこで王成の鶉を手に持って、喙《くちばし》より爪先《つまさき》まで精《くわ》しく見てしまって、王成に問うた。
「この鶉は売らないか。」
王成はここぞと思ったので、
「私は財産がございませんから、この鶉で命をつないでおります。売るのは困ります。」
といった。すると王がいった。
「たくさん金を取らせる。百金を取らせるがどうじゃ。売りたいとは思わぬか。」
王成は俯向《うつむ》いて考えてからいった。
「私は、もともと鶉を飼うのが本職でもございませんから、大王がこれをお好みになりますなら
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