。続いて二、三人登っていったが、皆王の鶉のために負けてしまった。旅館の主人は王成にいった。
「今だ。」
 二人は一緒に登っていった。王は王成の手にした鶉を見て、
「眼に怒脈《どみゃく》があるな、これは強い鳥だ。弱い鳥ではいけない。鉄口を持って来い。」
 といいつけた。侍臣の一人が喙《くちばし》の黒い鶉を持って来て王成の鶉に当らした。二羽の鶉は一、二度蹴りあっただけで王の鶉の羽が痛んでしまった。王は更に他の良いのを選んで当らしたが、それも負けてしまった。王は、
「急いで宮中の玉鶉を持って来い。」
 といいつけた。侍臣が王の命のままに持って来たのは羽の真白な鷺《さぎ》のような鶉で、ただの鳥ではなかった。王成はその鶉を見てしょげてしまい、ひざまずいて罷《や》めさしてくれといった。
「大王の鶉は、神物でございます。私はこの鳥で生計《くらし》たてておりますから、傷でも負うようなことがあっては、たちまち困ってしまいますから。」
 主は笑っていった。
「まァ放してみるがいい。もし鶉が死んでしまったら、その方に十分|償《つぐな》いをしてとらせる。」
 王成はそこで鶉を放した。王の鶉はすぐに王成の鶉に向
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