よ、すぐ帰ってくるから。」
そこで二人は林の中へ入っていったが、暫くたってやっと帰って来た。日が暮れて途はもう真暗であった。三人は一緒にその暗い中をいったが、老婆は将来のたよりないことを話して泣いた。山もまた心を動かされた。老婆はいった。
「この土地は人情がよくないから、親のない子や孀《やもめ》では暮していけない。阿繊ももう、あなたの家の婦《よめ》になっておる。ここをすごすとまた日が遅れるから、今晩のうちに一緒に伴れてってもらうといいが。」
そのうちに家へ着いた。老婆は燈《あかり》を点《つ》けて山に食事をさし、それがすんでからいった。
「あんたがもう帰って来る時分だと思って、持っている粟は皆売ったが、それでもまだ二十石あまり残っておる。遠くては持ってゆけないから、ここから四、五里もいくと、村の中の第一ばんめの門に、談二泉《だんじせん》というものがおる、これが私の買い主じゃ。あんたは気の毒だが、あんたの驢《ろば》に一嚢《ひとふくろ》おぶわせていって、門を叩いて、南村の婆が、二、三石の粟を売って、旅費にするのだから、馬を曳《ひ》いて来て持っててくださいといえばいい。」
そこで嚢の粟を
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