におし問答が始まった。なんでもマチアが聞いたところでは、御者はもうとても道がわからないと言って、書記にどちらの方角へ行けばいいか、たずねているのであった。書記は自分もこんなどろぼう町へなんかこれまで来たことがなかったからわからないと答えた。わたしたちはこの「どろぼう」ということばが耳に止まった。すると書記はいくらか金を御者《ぎょしゃ》にやって、わたしたちに馬車から下りろと言った。御者はわたされた賃金《ちんぎん》を見て、ぶつぶつ言っていたが、やがてくるりと方向を変《か》えて馬車を走らせて行った。
 わたしたちはいまイギリス人が「ジン酒の宮殿《きゅうでん》」と呼《よ》んでいる酒場の前の、ぬかるみの道に立った。案内《あんない》の先生はいやな顔をしてそこらを見回して、それからその「ジン酒の宮殿《きゅうでん》」の回転ドアを開けて中へはいった。わたしたちはあとに続《つづ》いた。わたしたちはこの町でもいちばんひどい場所にいるのであったが、またこれほどぜいたくな酒場も見なかった。そこには金ぶちのわくをはめた鏡《かがみ》がどこにもここにもはめてあって、ガラスの花燭台《はなしょくだい》と、銀のようにきらき
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